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五味 洋治
2016/03/18

小型核弾頭の模型?
謎のミラーボールが映す金正恩の焦燥

source : 週刊文春 2016年3月24日号

genre : ニュース, 国際

謎の銀色球体と金正恩
Photo:Kyodo

 北朝鮮の最高指導者、金正恩第一書記を年配の男性たちが取り囲み、その言葉を熱心にメモする――。北朝鮮でよく報道されるシーンだが、今月9日付の労働新聞一面の写真は、すこし違っていた。

 金第一書記の前に、奇妙な銀色の球体があったのだ。大きさは直径1メートルほどで、台に載っている。さながらダンスホールのミラーボールのようなデザインで、上部からは電線のようなものも出ていた。これが何なのか、具体的な説明は一切ない。

 記事によると金第一書記は、核兵器研究部門の科学者らに会い、「小型化された核弾頭の構造・作用原理」の説明を受けた。その後、第一書記は、核爆弾を軽量化し、弾道ミサイルに合わせることができたと満足げに話し、「米国がわれわれの生存権を核で奪おうとする時は、迷わず核で先手を打つ」とも語ったという。

 どうやら、「謎のミラーボール」は、小型化された核弾頭の模型のようだ。写真の後方には弾道ミサイルらしきものも。小型核弾頭を実戦で使う準備ができていることをアピールする狙いだろう。

 この記事に関して専門家の間では、「小型化の技術はまだ得ていない」との見方が有力だ。つまり単なる脅し用のハリボテということだ。

 ハリボテとはいえ、秘密にしておくべき「小型核弾頭」をわざわざ出してきたのは、米韓軍が韓国各地で今月7日から実施している合同軍事演習を意識してのことだ。最新鋭の装備、武器を使った過去最大規模の演習で、北朝鮮への上陸作戦も想定している。

 この演習を牽制するため、労働新聞は連日、「平壌侵攻には、ソウル解放作戦で対応する」などと、ソウルへの先制攻撃を匂わせる大見出しの記事を掲載している。

 そんな中、北朝鮮は10日早朝、日本海に向けてスカッドとみられる短距離弾道ミサイル2発を発射した。移動式の発射台が使われたとみられ、韓国軍も事前にキャッチできなかった。日本でも政府関係者が早朝、大慌てで官邸に駆けつけた。

 合同軍事演習は来月末まで。金第一書記は自分の方から動けば米韓軍の反撃に遭って自滅すると分かっているはずだ。それでも、焦りのあまり、局地的な挑発を行い、交戦に発展する可能性はある。

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