文春オンライン

連載尾木のママで

「住みよさランキング」8年連続1位の宮城県名取市 復興への道のり

尾木のママで

2018/07/26
note
イラスト 中村紋子
イラスト 中村紋子

 宮城県名取市の市制施行六十周年記念「なとり子育てフェスタ」で講演してきました。名取市は東日本大震災で大津波に襲われ九百人以上もの方が亡くなった。震災二週間後、ボクがこの地を訪れた時から七年。現地に足を踏み入れると、「何もない土地」が想像以上。復興の難しさを感じた。

 でも、ゆっくりでも着実に、復興の街づくりは進んでいる。

 千年に一度の規模と言われる東日本大震災。名取市の街づくりは、千年後の未来を見据えた壮大な計画なの。被害が甚大だった海岸側の閖上(ゆりあげ)地区では土地約四メートルのかさ上げが完了。復興公営住宅も着々と建設中。そこにも工夫が。例えば非常階段は、足の不自由な方やお年寄りも一緒に津波から逃げられるよう、幅が広く設計されているの。

ADVERTISEMENT

 震災被害を受けた小学校と中学校は、新たに閖上小中学校として今春開校。近く校舎の脇に、全校生徒が一緒に避難できるよう、広い緑道が出来るのですって。市長は児童生徒数が少ないと心配されてたけど、質の高い個別教育に取り組めるチャンス! 前向きに臨んでほしいわ。

 震災で人々が受けた傷は多様だから、復興も一様には進められない。市の中心から離れた内陸部に作られた公営住宅は、海の近くには怖くて暮らし続けられない人のためのもの。保育所や消防署等公的な施設も含め、市の機能の全てを整備し終えるまで、まさにゼロからの街づくり。復興を進めるには時間もお金も手間もかかるのだと実感した。

 にもかかわらず、名取市は民間雑誌が実施する「住みよさランキング」の北海道・東北エリアで八年連続一位! 人口も若い世代を中心に増えている。福島など被災地から仕事や子育てのため移住する人もいるとか。復興の困難さから目をそらさず、市民の意見や希望に耳を傾け、街づくりに反映させようという姿勢に、明るい未来を確信したわ。

「住みよさランキング」8年連続1位の宮城県名取市 復興への道のり

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー