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「世界一孤独」な日本のおじさんは、夏休みをどう過ごすべきか

2018/07/29
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長期休暇があっても「何をしたらいいかわからない」おじさん

 仕事が忙しすぎて休みがとれない、金銭的余裕がないという人もいるが、中高年男性の場合、そもそも、長期の休みがあっても「何をしたらいいかわからない」という人も少なくない。例えば、旅行などに行きたいと思っても、一緒に行く人がいないという問題にぶちあたる。ある調査によれば、「誰と一緒に旅行をしたいですか」という問いに、配偶者(パートナー)と答えた割合は男性が60.3%に対し、女性は35.4%。逆に友人と答えた人の割合は女性が28.1%に対し、男性は15.1%だった。夫は妻と旅行したいが、妻は友達や子供と旅行したい。そんなわけで、男性のぼっち旅は年々増加しており、リクルートの調査によれば、35~49歳の男性の一人旅率は平成17年度に26.2%(女性は10.7%)と平成4年度の12.3%の2倍以上に上っている。

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 若い女性同士、母と娘、オバサンたちなど、老いも若きも「女子旅」は大ブームで、観光業界も熱視線を向けるが、「男子旅」などあまり、聞くことがない。三重県が昨今の「おじさんブーム」に乗って、「オヤジ旅」などというものを提案し始めたが、そんなマーケティング戦略にホイホイと乗って、オジサン同士で旅に出る、とは考えにくい。男女の旅に対する意識の違いはコミュニケーションに対するとらえ方と似ている。つまり、女性にとって、旅もコミュニケーションも目的そのものであることが多いが、男性にとっては、どちらも、目的を達成するための手段という意識が強いところがある。「釣りをする」「ゴルフをする」「家族と時間を過ごす」という目的ありきで、旅をする。仕事のため、要件を伝えるという目的のためにコミュニケーションをとる、といったように「目的志向」であるため、気軽にオジサン同士つるんで「どっか行こう」「おしゃべりしよう」などとはなりにくい。

男同士で旅をしないのは、日本男性が抱える「孤独」が原因?

 そもそも、どうして、男同士で旅をしないのか。この普段あまり考えもしない問いを頭に浮かべた時、現代の日本男性が抱える「孤独」という大問題に突き当たる。心を通わせたり、信頼する人がなく、不安や寂しさを覚えることを意味する「孤独」。日本では、「自立」や「一人の時間を楽しむ」意味の“個独”と混同され、ポジティブに受け止められることが多いが、今、世界では、「孤独」は現代の最も深刻な伝染病といわれ、大問題になっている。心臓病や認知症など多くの病気のリスクを高め、健康をむしばむとされる。筆者は近著、『世界一孤独な日本のオジサン』で、世界に冠たる「孤独大国日本」の現状と、特にその犠牲になりやすい中高年男性の生きざまに焦点を当てた。

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 そこには文化的、社会的な多重的な要因があるが、理由の一つに挙げられるのが、オジサン旅が一般的でないことに象徴されるように、男性に課せられる「群れてはならない」「つるまない」という暗黙の縛りだ。高倉健のように無口で「孤高な」人が、男らしく、究極的にカッコいい。そんな固定観念が根強い。