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2018/08/10

陣内 そうすると、愛情を持って接する人って分かりますよね。

宮城谷 絶対、それは分かる。昔、タケシバオーという馬がいまして、売れ残っていたのを、かわいそうだからといって買った人がいるわけ。それが天皇賞まで勝つようになったのは、やっぱり人の情けに馬が応えたという気がします。だからナルハヤは未崎くんの気持ちに応えて走ってくれると思うし、そういうストーリーが競馬にほしいな、と思いますよね。

陣内 ぼくも競馬は、物語から入っちゃうんです。

宮城谷 血統はあまりよくないんだけど、小さな牧場の馬と、挫折した人がともに成長していくような、そんな物語が一番競馬には向いている気がします。

女王陛下から「一緒に競馬を見ましょう」と。

陣内 話は変わりますけど、知り合いの馬主さんなんですが、イギリスで持っていた馬が走ったときに突然、偉い人が来て「女王がお会いしたいと言ってる」と。びっくりして行ってみると、「あなた、いい馬を持っているわね。一緒に競馬を見ましょう」って、エリザベス女王の隣で見ていたそうなんです。馬主になると垣根のようなものがなくなるんだな、すごいなと思って。

宮城谷 イギリスは王室が馬を持っているし、ドバイのシェイク・モハメド殿下だって馬を持ってるわけだからね。馬ってそういう点では人の垣根をなくします。ぼくは「馬友」と言っているんですけど、馬で知り合いになった友だちとは長くつづくんですよ。競馬は麻雀とかトランプと違って、恨みっこなしみたいなところがある。だから、馬友は長続きするんです。

競馬は、十八人の容疑者から主犯を探すミステリー。

陣内 お金のほうにフォーカスが当たりがちですが、われわれが買っている馬券というのは馬の持っている可能性を測っているゲームなわけですよね。

宮城谷 競馬は、十八人の容疑者から主犯を探すミステリーなんです。容疑者が揃っていてデータもある。それでも、主犯と従犯を当てるのはなかなか難しい。犯人が思いがけないところに隠れているときがあって、そこがまた楽しい(笑)。

陣内 たしかヘミングウェイだったと思うんですけど、「競馬新聞にまさる小説はない」というようなことを言っていたそうです。