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急増する最新の墓「ビル型納骨堂」を選んではいけない

「ビル型納骨堂」が都心の「廃墟」になる日

2018/07/31
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墓地を作る場所がない!

 いっぽう現在、日本の人口の約3分の1が東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で構成される首都圏に集中している。つまり、今後は首都圏での死亡者数が激増することが容易に予測できる。ところが、首都圏で墓地として提供できる土地は少ないのが実態だ。

 墓を持つ側のニーズにも変化が表れている。墓地といえば、これまでは地方の実家の近くにある、あるいは郊外の山などを造成して開発した霊園に多く存在したが、こうした施設に対する不満も多い。年に数回の墓参りに行くにも遠くて交通利便性に欠ける、墓参り時の天候に影響を受ける、墓の清掃や雑草取りなど手間暇がかかる、土地使用料や墓石代などの費用が高いなどといった理由が挙げられている。何事にも合理的に考える世代が台頭していく中で既存の施設に対する不満が高まっているのである。

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「手軽」「ハイテク」「安上がり」の罠

 このような状況を反映して現在人気なのがビル型納骨堂(以下、墓ビル)である。墓地の形態をとらずに建物の中に収容する納骨堂は何も今に始まったものではないが、最近増加しているのが、ビルを建てて、あるいは既存のオフィスビルやマンションを改装して建物全体をお墓の収容場所にしようというものだ。墓もマンションのようにみんなで「一緒に住む」という時代になったのだ。

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 墓ビルではハイテク化も進んでいる。以前は建物内に棚を設えて骨壺などを並べるだけの簡素なものだったのが、機械化され参拝者は決められたブースに来てICカードで登録番号を読み取ってもらい、該当するお札などの一式が目の前に出現するのを待つ。まるで銀行の貸金庫室に行って自分の金庫を取り出すときのような感覚だ。線香などもあらかじめ備わっているので、手ぶらで参っても大丈夫。何事も手軽に済ますことも人気の秘訣になっている。

 費用も墓地であると区画にもよるが墓石などを含めるとなんやかんやで200万円から300万円程度はかかってしまうが、自動式納骨堂であれば100万円程度。永代使用権や永代供養料なども含まれているものが多いので安上がりである。

 また近年は少子化が進み、「おひとりさま」需要も増える中、墓守をする後継者がいない人にとっても負担が少ないといえそうだ。

 さて一見すると良いことづくしの墓ビルであるが、実は多くの問題を抱えている。墓地は土地の中に収容されるスタイルであることから、土地が永遠に存続する限りにおいては墓としても永久に存続していくことが前提となる。ところが建物内に収まっている墓ビルは、当たり前のことだが、建物は「永久不滅」でないということを考えなくてはならない。