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「暑さはチャンス」なぜ東京オリンピックは「太平洋戦争化」してしまうのか?

森喜朗、小池百合子、東条英機……今も昔も「竹槍精神」

2018/07/31

小池百合子の「打ち水」はまるで竹槍精神

 小池百合子都知事は、ついに「総力戦」で暑さ対策に臨むと宣言した。

「木陰を作る様々な工夫、打ち水、これが意外と効果があるねと、一言でいえば総力戦ということになろうかと思う」(2018年7月23日、テレビ朝日)

 しかるに、聞こえてくるのが、木陰、打ち水、よしず、浴衣、かち割り氷などでは、なんとも心もとない。これではまるで「竹槍3万本あれば、英米恐るるに足らず」の竹槍精神ではないか。

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打ち水する小池都知事 ©AFLO

 毎日新聞の新名丈夫記者は、1944年2月に「竹槍では間に合はぬ」「飛行機だ、海洋航空機だ」と書いて東条英機を激怒させた。それに倣って、「打ち水では間に合わぬ」「冷房だ、エアコン設置だ」ともいいたくなる。

安倍晋三の「冷暖房はなくても……」とボランティア動員

 もちろん、道路の遮熱性舗装や街頭のミストの設置などの対策も講じられてはいる。だが、もともと「我慢が大事」などの精神論が幅をきかし、小学校のエアコン設置さえ滞っていた国である。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」で、秋にもなれば、予算節約の大義名分のもと、精神論が復活するのではないか。

「冷暖房はなくてもいいんじゃないか…」(2015年8月28日、『産経新聞』)

 そういって、新国立競技場のエアコン設置を見送ったのは、ほかならぬ安倍晋三首相だった。

安倍マリオ ©AFLO

 その一方で、ボランティアの動員などは着々と進められている。企業も大学も、予算や優遇措置などで徐々に切り崩されていくだろう。マスコミだって、「努力と涙と感動」式の肯定的な報道で耳目を集めたいという誘惑にどこまで抵抗できるのか甚だ疑わしい。

 このままなし崩し的に東京五輪に突き進みそうだからこそ、太平洋戦争の刺激的な教訓が参照されなければならない。