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W杯決勝戦を忘れないうちに観たい、ロシアで上映禁止命令の“問題映画”

映画『スターリンの葬送狂騒曲』

2018/08/03

 先日閉幕したFIFAワールドカップ。放送時間に合わせて、睡眠時間が無茶苦茶になった方も多かったかと思います。色々と話題を振りまいた大会でしたが、特に決勝戦のフランス対クロアチア戦で、警官姿の男女がピッチに乱入したハプニングは世界を驚かせました。

ロシアのパンク・バンドが声明を発表

 この行動を起こしたのは、ロシアのパンク・バンドであるプッシー・ライオット。彼女らはSNSで声明を発表し、警官による違法逮捕や理由のない拘置への反対などの主張を掲げました。

ピッチを笑顔で駆けるプッシー・ライオットのメンバー ©getty

 プッシー・ライオットはただのお騒がせ集団ではありません。彼女たちの名が知られるようになったのは、2012年のロシア大統領選直前のこと。モスクワの大聖堂に目出し帽姿で現れ、プーチン追放を嘆願する歌を演奏したため、暴徒行為を行ったとしてメンバーのうち3人が逮捕されました。この抗議活動にロシア正教会が選ばれたのは、モスクワ総主教キリル1世がプーチンと政治的に深く関わりを持ち、正教会としてプーチン支持を表明していたためです。逮捕されたメンバーに対する拘禁は続き、裁判では被告側の証人がほとんど退けられました。そのためアムネスティ・インターナショナルは、プッシー・ライオットの行動は政治的思惑による合法的な活動であり、良心の囚人であるとしてプーチン政権を批判しました。

 またプッシー・ライオットは昨年にもニューヨークのトランプ・タワーで、ロシアで捕らえられているウクライナの映画監督オレグ・センツォフの釈放を求める抗議運動をしています。プッシー・ライオットの批判対象はプーチンであり、ひいては強権を行使する権力側の人間に対するものといえます。そして世界中で彼女たちの活動が支持されているのは、そんな強権政治への危機感が人々の中で共有されているからでしょう。

バラク・オバマ前米大統領 ©getty

 去る7月17日、バラク・オバマ前米大統領は、南アフリカの故ネルソン・マンデラ元大統領の生誕100年記念式典に出席し、ヨハネスブルクで講演を行いました。話題は人種問題のほか、現在の世界的な潮流についての懸念に触れるものでした。名指しはしませんでしたが、トランプ大統領の「気候変動はない」といった発言を始め、周到に作り出された嘘や、嘘がばれてもさらに嘘をつき続ける政治家の姿勢を批判し、事実がいかに信用の上で重要かを述べました。そして西側で想像を超えた速さで広がっている、人種差別的なナショナリズムや独裁的な政治、極右政党の台頭を警告。もちろんここにはアメリカのほかロシアも含まれます。ついでに言えば日本も。

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