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大阪桐蔭のエースも“マエケン体操” マネしたくなる歴代カープの選手たち

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/08/27

 大阪桐蔭の史上初となる2度目の春夏連覇で幕を下ろした第100回全国高校野球選手権記念大会。連日のように「満員通知」が出るなど大会を通じた総動員数は初めて100万人を突破し最終動員数は101万5千人となった。

 根尾昂、藤原恭大を筆頭にしたスター軍団・大阪桐蔭をはじめ、金足農業・吉田輝星の快速球やサヨナラツーランスクイズ。済美・矢野功一郎の大会史上初となる逆転サヨナラ満塁HR。また150kmを投げる投手も複数登場するなど今年の甲子園は大変な盛り上がりを見せた。

 私は大詰めの準決勝第2試合。済美ー大阪桐蔭戦を済美の応援スタンドから見た。試合は2回に済美が1点先制。大阪桐蔭が4回に逆転。そして5回。済美がミスをつき2ー2の同点に追いついた。その直後、ドラフト候補・大阪桐蔭のエース柿木蓮のとった行動に驚いた。ホームベースに背を向けマウンドをセカンド方向に降りたあと、自分を落ち着かせるためなのか、前傾姿勢になって肩甲骨を中心にして両腕をグルグル回し始めたのである。

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 そう! これはマエケン体操だ!!

 試合前のアップやイニングの合間で「マエケン体操」をする球児を見たことはあるが、甲子園の試合中にグラウンド内でしている姿を初めて見た。「マエケン体操」は血行が良くなり腕を振る感覚をつかめると言う。試合中にして実際どれほどの効果があるのかわからないが、体操をした後の柿木投手は、前半よりも投球がまとまり、残りの4イニング許したヒットは2本だけ。最後まで試合の主導権を渡さなかった。柿木にとって自分をリセットするために大事にしているルーティンに見えた。

マエケン体操中の前田健太 ©文藝春秋

マネたくなるカープの選手

 甲子園優勝投手にも影響を与えている「マエケン体操」は前田健太がカープのエースとして君臨し活躍したからこそ世に知れ渡ることとなった。彼にとっては高校時代から続けているただのウォーミングアップのひとつだったかもしれない。でも、動きの面白さもあいまってカープファンのみならず一気に全国の野球ファンに広まった。投球前マエケンがベンチ前でグルグルすると球場全体がどっと沸くのである。今では野球少年だけでなく、草野球の投手達もぐるぐるやって「マエケン!」と突っ込まれている。それほどまでに前田健太は「マエケン体操」で人気者になった。

 過去を振り返ってもマネたくなる様なカープの選手はたくさんいた。

 90年代から2000年代はじめにかけて先発・リリーフで活躍した佐々岡真司2軍コーチ。ロジンバックを手にとりボールを投げるとリリースポイントで「ぱっ」と白い粉が散った。大相撲でいうと水戸泉の塩撒き、プロレスでいうとザ・グレート・カブキの毒霧のごとく「ぱっ」と霧がかかる。それがカッコ良かった。次に2016年の優勝に大貢献した男気・黒田博樹さんの「フロントドア」と「バックドア」。用語の使い方も含めメジャーの経験を余すことなく教えてくれた。

 こんなペースで書いていたらページがいくらあっても足りないのでスピードアップ。大野豊さんの沈み込むようなフォームから放たれるパーム、北別府学さんの弾むようなワインドアップから投げ込むシュート。川口和久さんの倒れ込むように投げ込むスライダー。津田恒実さんの炎のストレート。高橋慶彦さん、正田耕三さんのスイッチヒット。緒方孝市監督のヘッドスライディングに、カムバックを誓う赤松真人選手のスパイダーマンキャッチ。山内泰幸さんのUFO投法。ミスター赤ヘル山本浩二さんの広角打法に衣笠祥雄さんの笑顔。古葉竹識監督のベンチ内半分隠れ。達川光男さんの疑似デッドボール。思い出せばきりがないほど個性溢れる選手が活躍していた。

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