昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2年ぶりの先発、西武・郭俊麟を変えた「言葉」の力

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/08/26

 首位を走り、10年ぶりの優勝へ向けラストスパートを切りたい西武に、また1つ明るい話題が生まれた。郭俊麟投手が約2年ぶりに一軍の先発マウンドに帰ってきたのである。8月26日vsソフトバンク戦での予告先発が発表されている。

 2015年に大卒で入団。2014年に開催された『第1回21U野球ワールドカップ』では、チャイニーズタイペイ代表として出場し、最優秀選手に輝いた実績などからも、日本でも大活躍が期待されていた。しかし、1年目21試合に登板し3勝7敗、防御率5.31、2年目12試合0勝3敗、防御率8.46と結果を残せず。さらに、3年目の昨年は、1月から『第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』に参加するものの惨敗。日本に帰ってきてからも状態は上がらず、故障も重なった結果、一度も一軍での登板機会がなく終わった。

 その厳しい状況を、今年、ついに乗り越えた。「去年は、本当に毎日、『明日どうなるか』みたいな状態でした」と本人が吐露するように、結果を残さなければいけないという焦りからも、少し状態が良くなったからと気持ちが急いで投げてみると、また別の箇所に痛みを発症し、一からやり直しという悪循環が続いていた。しかし、今季は違う。オフ期間にリハビリ、トレーニングを入念に行い、自主トレ期間中にはキャッチボールを開始。確かなる手応えをつかみ、完全復活への道を着々と進んできた。

約2年ぶりに一軍のマウンドに戻ってきた郭俊麟 ©文藝春秋

明らかに変わった26歳の台湾出身右腕

 5月12日、イースタン・リーグ(vs巨人)で公式戦復帰を果たすと、その後はコンスタントに試合に乗っかり、実戦感覚を取り戻してきた。特に8月に入ってからは、ローテーションに加わり、8月2日vsヤクルト戦では5回1安打0失点4奪三振、同10日vsDeNA戦6回4安打1失点6奪三振、そして、18日vs巨人戦で7回1安打0失点8奪三振と、3試合連続で好投。投球内容と安定感が評価され、ついに待望の大舞台に戻るチャンスが巡ってきた。

 当初、外国人枠の関係上、一軍登録は先送りになる可能性もあったが、それでも、状態の良さを映像でしっかりと確認していた辻発彦監督も「良い状態の時に使ってあげたい」と熟考。同指揮官体制での初起用を決断した。「十分一軍でも通用する球を投げている」と杉山賢人二軍投手コーチも太鼓判を押し、期待を寄せる。

 現時点で結果がどうなるかはわからない。だが、26歳の台湾出身右腕は明らかに変わった。それは、二軍監督、コーチングスタッフ、チームメイト、誰もが認めるところである。フォームの微調整など、技術的な修正はもちろんだが、何よりも一番の変化は「自信がついたこと」だと郭投手はきっぱりと話す。「復帰した最初の頃は、ストライクゾーンに入るかなとか心配でした」。その弱気な心を変えてくれたのが許銘傑二軍投手コーチだった。「そんなに考えなくていい。もっとシンプルに行こう」「どんないい投手だって打たれるんだから。打たれても、その中で成長していけばいい。次に向けて磨いていこう」。こうした言葉が「期待に答えなければ」「結果を出さなければ」と郭投手の焦る気持ちを払拭した。そして、結果を恐れず、思い切り勝負を挑めるようになっていった。