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2年ぶりの先発、西武・郭俊麟を変えた「言葉」の力

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/08/26
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郭を変えた許コーチのアドバイス

 そして、この許コーチの存在こそが、郭投手にとって非常に大きいのである。やはり、何といっても『言葉』だ。同じ台湾出身。周囲の誰もが「俊麟、明るくなったよなー。よく話すようになったし、笑うようになった」と驚くほど。日常的に母国語だけでコミュニケーションが取れるようになったことで、オープンマインドになったことは間違いない。「コーチが言っている言葉を、自分で理解できるということが大きいんだと思う。今、何が欲しいのか。何が足りないのか。何が心配なのか。そのまま直接コーチに伝えて、聞いて、自分がどこが悪いのかをすぐに理解できた方が、本人も絶対に安心できるんだと思います」。だからこそ、同コーチは「時にはケンカ、まではいかないけれど、お互いが理解できるまで徹底的に話し合う」ようにしているという。郭投手も「言われたことがすぐに理解できるし、悩んでいるところを伝えれば、『これをやれば大丈夫』と、その答えが返ってくる。それが、感覚的な話でもできるので、本当に大きいです」と全幅の信頼を置いている。

 また、台湾人コーチは「自分の気持ちを、しっかりと捕手に相談しよう」とも伝え、配球やリード面で相互理解を深める重要性を教えたという。さらに、「他の選手が良いプレーをしたときには『ありがとう』とか、そういう言葉をかけられるようになってきた。自分がマウンドを降りてからは、チームを応援することも必要。そうやって、野手もだし、他の投手たちにも、みんなに認めてもらうことで、本当の意味で『俺たちの仲間だ』って思ってもらうことが本当に大事なんです」とも。

 こうしたアドバイスは、すべて、自らの現役時代の経験値から導き出されたものなのである。それを直接伝えたことで、郭投手にもダイレクトに伝わり、変化が現れ始めているのではないだろうか。『言葉』がいかに大事か。日本人同士でも、伝えたいことのすべてが伝わるとは限らないことを考えると、僭越ながら、外国籍選手の孤独感、異国で成功する難しさを改めて思い知らされた思いがした。

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「チャンスは自分で掴む。そして、掴んだら絶対に離してはダメ」。自らの手で掴んだ絶好の機会を死守する福岡での好投を、恩師は埼玉からエールを送りながら見守る。「以前の僕は、チェンジアップだけだと思われてたはず。でも、今は違います。状態が『戻った』のではない。“新生・郭俊麟”です!」そう言って笑う、相変わらずのキュートな笑顔には、今までにない精悍さが宿っていた。

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