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連載歴史・時代小説の歩き方

大矢 博子
2016/05/07

月が替わってお仕事よ!
──江戸の契約社員たち

genre : エンタメ, 読書

 この春から新しい職場、新しい環境でお仕事されてる皆さん、もう慣れました? 毎年(公財)日本生産性本部が命名してる「新入社員のタイプ」によると、今年は「強い風に煽られたが自律飛行を保ち、目標地点に着地(内定)できた」から「ドローン型」だそうで、いや、もうこれほとんど大喜利になってきてないか。

 ちなみに私の世代は「テレホンカード型」と言われましてね。「一定方向に入れないと作動しない、終わるとうるさい」って、わっはっは、ほっといて。他にも「新人類」なんて呼ばれ方もしたもんよ。ところが今やテレホンカードなんかまったく目にしないし、流行語はチョベリグで止まってるくらいの旧人類に成り果てたわ。よぼよぼ。

 つまりどの時代だって新人はいろいろ言われるもんなんだよね。もちろん江戸時代も同じ。当時、求人と求職をマッチングする「口入れ屋」という仕事があった。奉公先を探したい人は、口入れ屋に頼んで仕事を斡旋してもらうわけだが、その仕組みがよくわかるのが、宇江佐真理『口入れ屋おふく 昨日みた夢』(KADOKAWA)。

 主人公のおふくは、口入れ屋「きまり屋」を営む叔父に頼まれ、すぐに奉公人を手配できない短期の女中奉公に「つなぎ」として派遣される。行った先で家庭問題に巻き込まれるという、いわば江戸版「家政婦は見た!」ですな。この作中で、「え、当時の奉公って今と同じじゃん!」というエピソードがたくさん出てくるわけよ。

 たとえばおふくが台所仕事を請け負った八百屋で、子守や店の手伝いを命じられる。でもそれは契約にないと断るのだ。「子守りや見世の手伝いもするとなると、給金も割高になるんですよ」と。「女中たァ、何んでもまとめてするもんだろうが」と言われたら「それは昔の話ですよ。この節の女中は決められた仕事以外はしませんよ」と返す。わあ、今の派遣業務と同じだ。契約、大事。じゃないとどんどんブラック化しちゃうもの。

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