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国が潤うほど苦しむ人々が増える矛盾の地

『喰い尽くされるアフリカ 欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日』 (トム・バージェス 著/山田美明 訳)――鼎談書評

source : 文藝春秋 2016年10月号

genre : エンタメ, 読書, 国際

 

片山 イギリス人ジャーナリストの力作です。アフリカの天然資源の諸外国による収奪の構造。それを助けて「売国」に励むアフリカ諸国の腐敗した権力。著者は的確な情勢認識と綿密な取材で描き抜きます。あまりに絶望的内容です(笑)。

 金属や石油。天然資源に恵まれたアフリカの未来は明るい。いずれはヨーロッパよりもアフリカが繁栄する。よくあった未来予測です。しかし本書を読むと、実態は暗黒化に向かう一方。資源による収入は一部特権階級に独占されている。また、資源獲得競争が熾烈さを加える中、やはり中国のやることが凄まじい。あれだけの人口の国が産業発展を目指しているのだから資源は幾らあっても足りない。中国の天然資源ブローカーたちが暗黒大陸で暗躍しているのですよ。アフリカ諸国の独裁者たちと癒着しながら、資源を収奪し、利ざやを稼ぎまくっている。

 本書によると、絶対貧困率の指標である1日1.25ドル未満で暮らす貧困者の割合は、コンゴで88%、ザンビアが75%、ナイジェリアで68%。ちなみに中国は12%でメキシコは0.7%です。アフリカの資源に世界の産業が支えられているというのに、アフリカの人民の圧倒的多数は極度の貧困に喘いでいるのです。驚くべき不公正です。

山内 一方で富と権力を手に入れた者たちは、最高級ホテルで最高級シャンパンを飲み、豪奢な暮らしを楽しんでいる。世界でも類のない貧富の差と社会的格差が日常になっています。文中で、ビジネス経験豊かな、あるイギリス系ナイジェリア人は母国の未来について「アフリカは鉱山になる。そしてアフリカ人は世界のごくつぶしになる」と憂いていました。

後藤 本書を支えているのは、筆者のフットワークの良さです。イギリス「フィナンシャル・タイムズ」紙のアフリカ調査報道特派員で、ネット時代の隠された情報を取得しつつ、現地を丹念に歩いている。大統領から裏通りの体制指導者まで、実に雑多な人々に会っている。取材蓄積の豊富さによって、アフリカの生々しい今が描き出されています。

片山 取材で訪れたナイジェリアで虐殺を目の当たりにして精神を病み、PTSDと診断されてもいるんですね。修羅場をくぐっています。

後藤 今、日本でこれほどアフリカを歩き、きちんと報告し、分析できるジャーナリストはどれほどいるでしょうか。イギリスが持つジャーナリズムの底力を感じました。

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