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連載近田春夫の考えるヒット

アングラバンド出身のレキシ その活躍で勇気が湧いてきたよ――近田春夫の考えるヒット

2018/08/08

S&Gレキシ)/Mosquito Bite[ALEXANDROS]

絵=安斎 肇

 レキシ……。

 そう担当の若者にいわれてもまったくピンとこないどころの話じゃない、そんな名前、ホント今の今までただの一度も聞いたことがなかった。そこでとりあえず教えられた通り、NHKナンチャラとかいうのを入力し、検索を始めた途端に出て来た画面には笑ってしまった。

 実はつい先だって、TVをカチャカチャとやっていた時“戯画化された山下清”のような風体の、チョイとパパイヤ鈴木にも似た男が一瞬目に止まり妙に気にかかっていたのであるが、まさにその“怪しげな人物”こそが、レキシそのひとだったからである。

 おっと失礼! 山下清じゃなくって西郷隆盛でしたワ。だってよく見りゃ曲タイトルが『SEGODON』。要するに“西郷どん”ってことですもんね。ちなみにもう一曲の方は『GET A NOTE』で、こちらは“下駄の音”とでも読ませたいところなのだろう。なにせ『ゲゲゲの鬼太郎』エンディングのテーマである。

 そのような一連の発露——といいますか存在的意識の主張といいますか——から想いを巡らすにこの御仁、どうやら相当に“くだらねーこと”が趣味なお人柄ともお見受けしたのだが、それにしてもレキシ! この顔はどうしてもどこかで見たことがあるのである。

S&G/レキシ(ビクター)2007年レキシとしてデビュー。本作でシングル3枚め。アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」、大河ドラマ「西郷どん」関連ソング。

 そうだ、クレジットを見れば何かわかることがあるかもしれない。俺はそう思い、歌詞カードをひろげてみた。すると作詞作曲の欄にあったのが、池田貴史の名であった。ん? これはひょっとして?

 いや、こういう時には、本当に便利な時代になったものだとつくづく思う。早速調べがついた。

 そぉかぁ。やはりスーパーバタードッグであったか……。それは、かつて80年代に“東京ロッカーズ”のムーブメントを立ち上げたことでもよく知られるプロデューサー、s-kenによって20世紀も終わり近い頃に売り出された、なんだかヘンテコリンなファンクバンド。そのキーボードが池田貴史だったのだ。

 スーパーバタードッグとはいうまでもなく谷岡ヤスジの漫画でおなじみ“バター犬”の英訳? ではあるが、要するにそれは超アンダーグラウンドなセンスといっていい。

 そんな出自に、加えて冒頭述べた通りの見てくれのレキシである。

 よくぞ、この大河ドラマ関連ソングに国民的アニメのエンディングという、超メジャーな両A面をリリースしてみせたものだと。その昔の佇まいを思い出すと、同じ空気を呼吸していたこともあるものとしてなんだか感無量である。

 この国の音楽シーンも、満更すてたもんじゃねーな。俺も、まだまだこれからヒット曲を狙えるんだと、今日は勇気が湧いてきたよ。マジで!

 しかしレキシ。それはそうと顔と声が全然結びつかない。そこが魅力(笑)なのかもね。

Mosquito Bite/[ALEXANDROS](ユニバーサル)「少年ジャンプ」人気マンガの実写化映画『BLEACH』の主題歌。

[ALEXANDROS]。

 この曲調には、もう少し老けた声の方が合いそうかも。

今週のエネルギー事情「毎日暑くってさ、うちはエアコン27℃ぐらいにしているんだけど、最近25℃ぐらいにしろって言うじゃん。それで思い出すのは日本の原発っていまどうなってるのかね。福島のとかってもう再稼働してるの?」と近田春夫氏。「大震災のときはあんなに電力危機が叫ばれていたけどさ、結局原発動いてなくても大丈夫なんじゃんね」