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「球場全体が敵だった」 “タオル回し”が生んだ東邦の7点差大逆転劇【夏の甲子園100回! ベストシーン】

2016年 東邦10-9八戸学院光星

2018/08/14

今年で第100回を迎えた“夏の甲子園”。
その 100年を超える歴史は名勝負の歴史でもあります。波乱・衝撃、旋風、怪物、ライバル、そして大逆転・・・・・・。
「甲子園」というフレーズだけで、さまざまな場面がよみがえってきます。
そのなかから、もう一度振り返りたい“ベストシーン”をご紹介します。
【2016年(平成28年) 第98回 2回戦 東邦[愛知]10-9八戸学院光星[青森]】

 

『夏の甲子園 名勝負ベスト100 (文春MOOK)』より

◆◆◆

 甲子園のアルプススタンドの応援風景といえば、かつてはコンバットマーチや人文字などが主流だったが、近年はサッカーのサポーターのように揃いのタオルを回す応援スタイルがトレンドとなりつつある。それを強く印象づけたのが、この逆転試合だった。

7回表を終わって9-2だった

 東邦は1年生の夏に甲子園で華々しくデビューした藤嶋健人(現中日)が最上級生となり、“エース・4番・主将”のまさに大黒柱。センバツでも優勝候補に挙げられたが2回戦で敗退し、最後の夏に懸けていた。北陸(福井)との初戦では、藤嶋は登板せず打者に専念。1イニング全員得点、10者連続得点と派手に打ちまくり、19-9と圧勝していた。

 満を持して先発した藤嶋だが、打力のある八戸学院光星を相手に、立ち上がりから不安定なピッチングで先制点を奪われる。3回表にも失点を重ね、このイニング2つめの死球を与えたところで、森田泰弘監督は、ライトを守る左腕松山仁彦とスイッチ。だが、松山も光星の勢いを食い止められず、5番花岡小次郎の2ランなど、7回表を終わって9-2と一方的なスコアとなった。

まず7回裏に2点、8回裏に1点

 7回裏から、光星は4回から登板し中盤3イニングを無失点に抑えた左腕戸田将史に替え、初戦を完投勝ちしたエース桜井一樹を投入。結果的には、この交代が裏目に出た。7点を追う東邦は、藤嶋のタイムリーなどで2点を返す。8回裏にも、7番高木舜の犠飛で1点。

東邦は7、8、9回で8点。甲子園の雰囲気が生んだ大逆転劇だ ©共同通信社

 この頃から、東邦の攻撃中、球場全体が後押しするような雰囲気に包まれていく。初めは劣勢のチームを応援する甲子園独特の空気だと思われた。だがブラスバンドの演奏に合わせてアルプス席だけでなくスタンドの至るところでタオルがぐるぐると回され始めると、それ以上のドラマを期待しているのだと、グラウンドで戦う選手たちも気づき始めた。