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「処女風俗嬢」はなぜ自分の恋愛に積極的になれないのか

処女を持て余しつつも、処女を捨てる相手に出会う気持ちが生じない

2018/08/09
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客の男性と密室で2人きりに

 決して嫌ではない仕事で高い報酬を得られることを知ってしまうと、なかなかそこから抜け出ることが難しいというのは、よくあることだ。だが、ヒカリが選んだデリヘルの仕事はピンサロとは違い、客の男性と密室で2人きりになってしまう。これまでの風俗取材で、そうした密室の現場では、客からの性行為の強要が頻繁にあると聞いている。彼女に対して、そうだったのではないかと問いかけると、黙って頷いた。

「そういうときは『ダメです』って断ってました。何度も言ってくる人には『本当にダメなんですよ』って、強い口調で返してました」

 それに対して、「なぜ頑なに処女を守ろうと思ったの?」と尋ねると彼女は即答した。

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「こんなとこで処女を捨てるのはヤバイと思ってました。好きな人……できるかどうかわかんないけど、とりあえず今ではないって。やっぱ、入れたくないんですよね……」

 そこまで話すと、「あと……」と言ってからヒカリは付け加えた。

「私ってそういう場所(風俗)に慣れてない感じがウリになってるじゃないですか。清純派というか……。そのイメージが、1回でも(最後まで)やると、剥がれそうだし……」

「10万って言われたら悩むなあ……」

現在もSMクラブで働いているヒカリ(仮名)

 これまでの話とは一転、自分のなかの計算高い一面も明かした。だが、さらに話を進めていくと彼女の言葉は揺れ動く。

「余分におカネ出すからって人もいましたけど、おカネでは揺るがなかったですね。私のなかでは処女が大切なものっていう認識があるのかな? なんかおカネで売るというのも、値段をつけるみたいで抵抗があったんです」

 そんな彼女に対し、私は「では、いくら出すと言われたら考えるというのはある?」と意地悪な質問を畳みかけた。

「10万って言われたら悩むなあ……。でも、自分が納得する人とのときのために、とっておいた方がいいかな」

 彼女はそのデリヘルを1年で辞めた。ただし、退店の理由は次のことからだ。

「50代後半くらいのお客さんに、僕の専属になってほしいって言われたんです。それで店を辞めて、1回3万円くらいで会うようになりました。最初の約束で本番はなかったんですけど、やっぱり途中から求めるようになってきましたね。もちろん拒んでました。そうしたら、2カ月くらいして、『妻にバレた』と連絡が来て終わりました」