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「処女風俗嬢」はなぜ自分の恋愛に積極的になれないのか

処女を持て余しつつも、処女を捨てる相手に出会う気持ちが生じない

2018/08/09
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「男の人と一緒に過ごして、そんなに楽しいとは思えなかった」

 そろそろ大学3年生という時期に、ヒカリは一度体調を崩したことにより、風俗ではなく、ガールズバーで働くことにした。

「具合が悪くてネットで調べたら、エイズと同じ症状なんです。それですぐに保健所に行って検査を受けました。結果は陰性だったんですけど、性病が怖くなって、風俗から足を洗うべきではないかって考えたんです。でも、ガールズバーでの仕事は、男の人と話すのが苦手なんで、3カ月くらいで上がりました」

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 大学時代、男性との会話が苦手にもかかわらず、2、3回は合コンをセッティングされたことがあったそうだ。

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「やっぱりうまくいきませんでした。私自身、男の人と一緒に過ごして、そんなに楽しいとは思えなかったんです。それでもいちおう、学校で気の合う男の人くらいはいたんですけど、その人と付き合うとかの未来は見えなかった」

 男性といても楽しめないヒカリが選んでしまう仕事は、男性を愉しませる風俗だった。彼女はふたたび、前よりも頻度を減らしてデリヘルで働くようになる。

「体を触られたりとかキスだとか、あんまり嫌じゃないんです。人に尽くすのが好きというか、相手が興奮してくれるんなら、私にも存在意義がある、みたいな……」

 私が「それって承認欲求じゃない?」と口にすると、彼女は「そうですね。まるっきり承認欲求なんでしょうね」と呟いた。

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「男の人に恋愛感情を抱くのは難しいかな」

 ヒカリのスケジュールは、大学3年の半ばから教員資格を取るための教育実習、続いて就職活動に忙殺された。

「その時期はさすがにバイトどころではありませんでした。でも就職が決まった大学4年の夏から卒業ちょっと前までは、オナクラで働いてました」

 そこも女性が手を使って、男性を射精に導くいわゆる風俗店である。そして就職し、現在のSMクラブでの仕事に至る。彼女は諦めた口調で言う。

「気持ち的に、男の人に恋愛感情を抱くのは難しいかなって思います」

 男を知る前に男の本性を知り、処女を持て余しつつも処女を捨てる相手に出会う気持ちが生じない。漂流を続ける彼女がどこに行き着くのか、まだその終着点は見えずにいる。

「処女風俗嬢」はなぜ自分の恋愛に積極的になれないのか

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