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【新書の窓】特別でない現実

『貧困世代』『「超」進学校 開成・灘の卒業生』『フジテレビはなぜ凋落したのか』『本物のカジノへ行こう!』『第一次世界大戦史』

source : 文藝春秋 2016年6月号

genre : エンタメ, 読書

いま十五―三十九歳の若者約三千六百万人は一生涯、貧困であることを運命づけられている世代――。ベストセラー『下流老人』の著者・藤田孝典『貧困世代』(講談社現代新書)は、支援待ったなしの状態にある彼らを、長らく社会福祉が対象外としてきた問題点を指摘する。群馬県・前橋から埼玉県・大宮まで歩いた所持金十三円の二十一歳の男性ら、平成の世を生きているとは思えない現実が次々と描かれる。彼らは極端な例。でもそれが特別とも言えない現実を読者に突きつける。

 一方、エリートの今に目を向けたのが、濱中淳子『「超」進学校 開成・灘の卒業生』(ちくま新書)。両校の卒業生約千人を追跡調査し、その後の人生が明らかに。例えば年収の上昇については、東大に進学さえすれば、中高時代の成績の効果はデータ上ご破算になるという。さらに、エリートに囲まれたエリートだけが感じる劣等感から、勉強に意欲を無くしていく学生の現実など、秀才たちの影も描きだす。

 吉野嘉高『フジテレビはなぜ凋落したのか』(新潮新書)は、同社の元プロデューサーが栄枯盛衰を振り返り、過去の成功体験が凋落を招いたと分析する。巷にありがちな暴露本や内部告発本の類ではない。本社のお台場移転で旧社屋の「大部屋」がなくなり、社員の意識や人間関係に大きな変化が生まれたという。フジの凋落は「多くの日本企業が抱える構造的問題と通底」している。もって他山の石としたい。

 スポーツ選手の闇カジノ通いが話題となったが、本当のカジノは一大ビジネスだ。松井政就『本物のカジノへ行こう!』(文春新書)は、二十代から給与と有給休暇の多くをカジノに費やした元ソニー社員が実体験とともに、カジノの魅力やビジネスのからくりなどを解説する。カジノの様子は臨場感たっぷり。客は本当に必ず負けるのか。実践的なアドバイスを読みながら一獲千金の妄想を膨らませるのも楽しい。

 飯倉章『第一次世界大戦史』(中公新書)は最新の研究に基づく一次大戦の通史である。軍人・民間人あわせ「一六〇〇万人とも言われる」犠牲者をもたらした大戦はなぜ始まったのか。なぜ長期化し四年以上に及んだのか。各国の指導者はどう決断したか。「諷刺画とともに見る指導者たち」という副題の通り、チャーチルやヒトラー、ヴィトゲンシュタインなど多彩な人物が織りなす歴史のダイナミズムが、絵とともにしっかり伝わってくる。(川)

フジテレビはなぜ凋落したのか (新潮新書)

吉野嘉高(著)

新潮社
2016年3月16日 発売

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本物のカジノへ行こう! (文春新書)

松井 政就(著)

文藝春秋
2016年3月18日 発売

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