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芥川賞作家・津村記久子「なんで『西部警察』はよくて『うる星やつら』はダメやったんやろう」

テレビっ子作家・津村記久子インタビュー #1

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心霊写真とか怖い話が好きだった子どものころ

―― 『ディス・イズ・ザ・デイ』では「(日常は)ずーっと一人で冷たい広い川を渡ってる感じ。(略)試合があってくれるっていうことはさ、そういうとこに飛び石を置いてもらう感じ」という、好きなものを糧に生きてる人にはとても共感する表現があります。

津村 「とりあえず試合があるわ」とか「家で今からおやつ食べながら試合観よう」って思ったら、立ち直ったりしますよね。

―― 子供のころはテレビは観てましたか。

津村 すごい観てたと思います。『あなたの知らない世界』がほんとに好きでした。私の好きなものが全て詰まってましたね。心霊写真とか怖い話とか。

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『うる星やつら』はダメで『西部警察』はOKだった両親

―― 毎年、夏休みのお昼にやっていた番組ですね。

津村 同じ「お昼のワイドショー」の『テレビ公開捜査』も好きでしたね。人探しに興味あったんですよね。なんでやろうと考えるのが好きやったんちゃいますかね。

 あとはアニメを観て……、あ、『西部警察』が好きでした! 幼稚園の頃に日曜に『西部警察』を観るのがほんまに楽しみでしたね。話も好きやったし、刑事も好きやったし、石原軍団も好きやったし、すべてが好きでしたね(笑)。

―― ご両親って厳しい方でしたか。

津村 そんなには。でもアニメは観るなっていう作品もありましたね、『うる星やつら』とか。今から考えると、銃とか撃つ『西部警察』がOKなのに、なんで?って思いますけど(笑)。

―― 小学校のクラスではどういうタイプの子でしたか。

津村 地味な子供でした。うるさくて先生に怒られるんやけど立ち位置は地味な。友達はいるにはいるし、いじめられたとかはないんですけど、大人びた同級生には侮られてる子でした。

関西ローカルの深夜映画で「サブカル」に

―― その頃はどんなものを観ていましたか?

津村 高学年くらいでトレンディドラマが流行ってたんですけど、ドラマには興味がなかったですね。『グーニーズ』とか洋画のビデオを借りて観るのが好きやったんです。あと、中学の時は関西ローカルでものすごく細かい映画をやってたんです。夜中に『アンダルシアの犬』とか(笑)。

 それで図書館行ったら古い映画の本は借りられずに置いてあるから、そういうのを読みながら「あぁ、今日はあれやるんや」って。だから、サブカルっぽくなったんですよ、そのへんから。

―― その深夜の映画番組は、最初はたまたま見つけたんですか。

津村 読売テレビで深夜の1時から3時ぐらいに、月~金で毎日やってたから自然に目に入ってきましたね。今ではなかなかテレビではやらないような文芸映画、単館系の映画とか白黒映画をやってましたね。ほとんど内容は覚えてないですけど、そこからなんか嫌な子供になり始めて(笑)。