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「この世界の片隅に」松本穂香が語る「おうちで2回作った戦時中のごはんのこと」

「この世界の片隅に」松本穂香が語る「おうちで2回作った戦時中のごはんのこと」

松本穂香インタビュー#1

note

『ひよっこ』の澄子もよく食べて、よく寝てましたよね

――松本さん自身は、家事は得意なんですか?

松本 いえ……、私は一日じゅう家にこもっているのが苦になるタイプなので、毎日同じ時間に起きて、同じことをしてっていう生活はできない気がします(笑)。なので、すずさんってすごいなって思うんです。すずさんと自分が似ているところはテンポかなと思います。しゃべるテンポだったり、食べるテンポだったり。

――けっこう食べるシーンがありますよね。

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松本 よく食べて、よく寝てる。『ひよっこ』の澄子もよく食べて、よく寝てましたよね。そしてふたりともボーッとしてる。ただ、すずさんも澄子も、あえてボーッとしているときがあるんですよ。「みんなが笑顔になるんだったら、私はボーッとしたキャラクターのままでいよう」っていうような。

©TBS

私の知らない戦争の時代

――『この世界の片隅に』は、戦争を描いていながらそうした笑顔が常にあるような感じがしますね。

松本 こうの史代さんの原作漫画を読んだのは、主演が決まった後のことなんですが、「これは戦争ものだから」って、ちょっと構えて読んだんです。きっと悲惨なことが次々と描かれているんだろうってイメージしながらですね。でも上編を読み終えても、中編を読み通しても人物に笑顔があって、まだ全然、まだ大丈夫って感じで。でもその、どこかのんびりした感じが下巻で突然崩れて、日常の暮らしに戦争が入り込んでくる。その衝撃が忘れられません。

――周りを和ませていたすずにも悲劇が訪れてしまう。

松本 そうですね。笑顔の生活が続いていたからこそ、戦争という大きなものに抗えずに受けてしまう辛さとか、苦しさってより大きなものになってしまったんじゃないかな。すずさんの身に降りかかる出来事はひとつひとつ考えさせられることが多くて、演じるのは大変です。でも、私の知らない戦争の時代というものに向き合うこのお仕事は、自分にとって絶対に大事なものだと思っています。

#2へ続く)

 

まつもと・ほのか/1997年生まれ。大阪府堺市出身。主な出演作品に映画『青空エール』(16年)、『世界でいちばん長い写真』(18年)テレビドラマ『ひよっこ』『平成物語』など。9月13日に写真集『Negative Pop』が発売。10月5日には出演映画『あの頃、君を追いかけた』が公開。

写真=鈴木七絵/文藝春秋 

「この世界の片隅に」松本穂香が語る「おうちで2回作った戦時中のごはんのこと」

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