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「長袖パジャマ」「アイマスク」は必須品? 睡眠専門医が語る「熱帯夜の攻略法」

御茶ノ水呼吸ケアクリニック院長・村田朗先生インタビュー

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扇風機は使うべきかどうか

―― 扇風機はどのように活用するのがいいですか?

村田 弱い風なら寝ている間にあたっても構いませんが、強い風は薄着と同様、表面温度ばかり下がってしまいます。エアコンの風が身体に当たらないよう、空気をかき混ぜる使い方ならいいのかもしれませんが……。でも基本的には、エアコンで十分だと思います。

お年寄りが暑さを感じない理由

―― お年寄りの夜間熱中症が増えていますが、お年寄りの方が特に気をつけるべきことはありますか?

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村田 日頃からエアコンをつけずに過ごしていて、高い室温に慣れてしまっているお年寄りの方が多いですよね。さらに、お年寄りは新陳代謝が鈍っていたり、水分をあまりとらなかったりして、汗をあまりかかない。だから、なおさら暑さを感じません。

―― 汗をかかないと、なおさら暑さを感じない?

村田 2002年に全国の小中学生を対象とした理科の自由研究コンクールで入賞した「38℃の日は暑いのに38℃の風呂に入ると熱くないのはなぜか」という研究をご存知ですか? 当時、愛知県の中学生6人が発表した研究です。

 38度のお風呂はぬるく感じるのに、38度の日を暑く感じるのは、「外の温度と皮膚の表面の温度の差が大きければ大きいほど熱く感じるから」なんです。

 若い人の場合、汗をかくと、その汗が蒸発し、皮膚の表面の温度が下がります。結果、皮膚表面の温度と外の気温との差は大きくなって、暑く感じるわけです。それに対して、汗をかきにくいお年寄りの方は暑く感じにくいのです。

―― 若い人よりも、お年寄りのほうが暑さを感じにくい原因がたくさんあることがよくわかりました。

村田 「暑くない」とおっしゃって室温調節をせず、熱中症で倒れてしまうお年寄りの方が多いです。客観的にみて、夏の夜はエアコンなしで過ごせるような暑さではありません。特にお年寄りの方は自身の感覚だけを頼りにするのは危険です。

子どもは大人より体温が高い

―― 小さな子どものいる家庭で気をつけるべきことはありますか?

村田 小児科の待合室は、「赤ちゃんが服を脱いでも寒くないように」と28度に温度を設定しているのですが、子どもは大人よりも少し体温が高いので、就寝時に28度ではやっぱり暑いでしょう。きちんと服を着せてあげた上で、様子を見ながら、多少室温を下げてあげてもいいかもしれません。

 大人も子どもも、就寝時に適切な室温調節をせず、内臓や脳を休ませてあげられない状態が続くと、いわば連日徹夜をしているような状態になってしまいます。すると、当然身体が弱るので、夏バテや熱中症のリスクも上がるのです。日中の夏バテや熱中症を防ぐためにも、熱帯夜にしっかり休めるよう工夫してみてください。

「長袖パジャマ」「アイマスク」は必須品? 睡眠専門医が語る「熱帯夜の攻略法」

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