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なぜ安倍首相はなりふり構わず「石破潰し」に動くのか

早くも総裁三選の「その先」を見据える安倍。残る懸念は地方票の行方か

2018/08/10

竹下派切り崩しの秘技

 岸田と並ぶ安倍の次なる攻略対象は竹下派だった。今春、額賀福志郎に代わって派閥会長に就任した竹下亘は、「安倍さんが引き続き総理になるか。『はい、その通り』とは即答しかねる」と漏らしていたからだ。

竹下亘氏 ©文藝春秋

 派閥創設者の竹下登の異母弟でNHK記者から政治家に転じた亘が、逆らえない人物がいる。兄の秘書を長く務めた後、地元島根選出の参院議員に転じ、かつて参院自民党の「ドン」と恐れられた青木幹雄だ。青木は自らの直系である今の参院自民党最大の実力者、吉田博美参院幹事長・竹下派会長代行を通じて派閥運営を左右する。

 そもそも亘が額賀の後の派閥会長になれたのも、青木が吉田ら参院側を使って額賀に引導を渡したからだ。亘は一定の数を持ちながら、あえて総裁選の支持を明確にしない、あいまい戦術をとった。それも、狐と狸の化かし合いのような旧い永田町の駆け引きにたけた青木の意向に沿ったものだった。

©文藝春秋

 亘も青木も究極の目標は、小渕恵三の愛娘、優子を日本初の女性総理に押し上げること。しかし優子は44歳と若く、3年前、政治資金問題で躓いたばかり。総裁を狙うのは「次の次」以降だ。青木は自分の後を継いだ息子の参院議員青木一彦の選挙で石破の世話になっており、今回は石破支持を打ち出すのではとの見方が根強かった。

 安倍が石破を完膚なきまでに叩きのめすためには、竹下派を味方に付けるか、少なくとも全面的な石破支持を阻止することが必須。安倍は、竹下派対策の要諦は青木対策にあると睨んだ。

 鍵は来年の参院選だ。改選議席が一に減った長野選挙区で吉田が野党の羽田雄一郎相手に苦戦必至とみるや、吉田を比例区に転出させ、次回から導入される「特定枠」の名簿上位で当選を保証する案まで考え周辺に漏らした。もっとも、構想通り「特定枠」で処遇された吉田が4回目の当選を果たしても、「選挙区から逃げた」と批判され力を失いかねない。ここにも、吉田を可愛がる青木をあらゆる手を使って懐柔したい安倍の執念がうかがえる。

 同時に、安倍は竹下派内で自身への支持を増やす多数派工作に精を出す。派内の一定以上を安倍で固めてしまえば、さすがの青木も無理はできないだろうとの計算だ。安倍は、経済再生相で竹下派会長代行の茂木敏充、厚生労働相の加藤勝信、竹下派事務総長の山口泰明、元総務相の新藤義孝ら安倍支持を公言している竹下派の面々に声をかけ、「一人でも多くの仲間に安倍支持と言わせてほしい」と頼み込んだ。

「9月の総裁選も、しっかり三選を自ら勝ち取って、そして万全な態勢で、日朝交渉に臨んでもらいたい」

 山口が6月13日夜、東京都内で開いた自身の政治資金パーティで、竹下を差し置いて安倍三選支持を表明したのはその号砲だった。

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