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なぜ安倍首相はなりふり構わず「石破潰し」に動くのか

早くも総裁三選の「その先」を見据える安倍。残る懸念は地方票の行方か

2018/08/10

 7月25日、吉田を平河町に構える事務所に呼んだ青木は、「参院は石破支持でまとめなさい」と指示した。

©文藝春秋

 安倍は第一目標である竹下派からの全面的な支持取り付けこそかなわなかったが、青木の指示を参院にとどめることには成功した。今後は、各個撃破で態度を決めきれない竹下派の衆参両院議員の支持獲得に力を注ぐ。

 岸田派と竹下派の大勢を取り込むことにほぼ成功した今、安倍の最大の懸念はただ一つ。それは今回から国会議員と同じ票数となり、重要度を増した地方票の行方だ。内閣支持率は回復傾向にあり、各マスコミの世論調査によれば、自民党支持者の間では石破を大きく引き離してトップに立つ。とはいえ、森友学園や加計学園の問題への対処の仕方に国民の視線はなお厳しい。長期政権による「飽き」も広がる。安倍自身は、数か月前まで「前回は地方票で石破氏に負けたが、今度は現職総裁としてそうはさせないので大丈夫だ」と自信を示していた。ところが最近、地方党員の間に安倍に厳しい意見が多いとの情報が多く寄せられ、一転、気を引き締めている。

党員投票年齢引き下げも

 一方の石破も議員票では広がりを欠くので、地方票で圧倒的なトップに立つ以外に活路を見いだせない。ある石破支持の議員は「地方票で石破がトップに立つとの見通しが報じられれば、議員票もかなり石破に流れる可能性はある。そこに期待するしかない」と望みをつなぐ。かつて地方票での圧倒的優位を背景に総裁選を制した小泉純一郎元首相にならった戦略だ。

小泉純一郎氏 ©文藝春秋

「自民党支持者の間で私の支持が高いといっても安倍内閣の支持者は20代、30代の若者が多い。実際に投票権を持つ自民党員は中高年層が多いから楽観はできない」。安倍は周辺にこう語り、懸念をのぞかせている。

 公選法や国民投票法の選挙権年齢引き下げと整合性を図るとの名目で、自民党は「20歳以上」としている党員投票年齢を「18歳以上」に引き下げる方向で検討に入った。これも安倍の懸念を忖度した措置とみられている。

 当の安倍は外交日程以外、9月の投票日まで地方の党員への働きかけに注力する考えだ。また、石破が頼みとする小泉進次郎を巡っても、官房長官の菅がさかんに「将来のリーダー候補」と持ち上げ、囲い込みに余念がない。

「白河の戦いでは東軍、西軍兵士だけでなく住民の方々も犠牲になりました。先人たちは敵味方の区別なく、手厚く弔い、慰霊碑を建て、香花を手向けられています。どこまでも寛容な心を忘れることはありません」

 7月14日、福島県白河市で「白河口の戦い」の犠牲者を弔う合同慰霊祭が開かれた。「白河口の戦い」とは150年前の戊辰戦争で、会津藩や東北諸藩からなる奥羽越列藩同盟と、長州藩などの新政府軍が交通の要衝を巡って激しく衝突した戦闘だ。その慰霊祭で長州出身である安倍のビデオメッセージが流れ、会場はざわめいた。

 当初、安倍のメッセージは予定されておらず、約1000人の参加者に配られた式次第には記載されていなかった。これは依頼されれば受けるとの安倍サイドの感触を得た鈴木和夫市長の要請で、急遽実現した企画だった。