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なぜ安倍首相はなりふり構わず「石破潰し」に動くのか

早くも総裁三選の「その先」を見据える安倍。残る懸念は地方票の行方か

2018/08/10

 2016年の参院選の改選一人区で自民党は東北6県のうち秋田以外を取りこぼした。安倍が長州出身を誇りにしていることや、奥羽越列藩同盟から秋田藩が脱落した歴史を引き、当時、民進党幹事長だった枝野幸男は「現代の戊辰戦争」だと勝因を解説した。

枝野幸男氏 ©文藝春秋

 枝野の解説の当否は別にして、12年の政権復帰以来、計4回の衆参両院選での圧勝が求心力の源泉である安倍にとって、東北は鬼門になりかねない地域。東北で安倍支持を広げることは、総裁選だけでなく、憲法改正に向けて是が非でも勝たねばならぬ来年の参院選での弱点を補う狙いもある。

総裁選「その先」のカギ

 現在、安倍陣営では首席秘書官の今井尚哉らを中心に極秘の調査が進む。細田派の国会議員、地方議員に加え、メディア関係者や内閣情報調査室まで駆使して、石破がいつ、どこに入り、誰と会って、何を話したかを調べているのだ。反応が良かったという情報があれば、その地域に安倍が出向く、あるいはビデオメッセージを送る。場合によっては安倍自身や菅ら側近が直接電話を入れてくぎを刺す徹底ぶりだ。

 独裁政権による反乱勢力の鎮圧を彷彿とさせるこの計略は、安倍の自信のなさの裏返しでもある。

 そもそも安倍が国政選挙で連勝できたのは、主要野党の分立が原因だ。

「安易な合従連衡」を嫌う立憲民主党代表の枝野は、国民民主党や共産党との表だった選挙協力を拒み続けるが、参院選まで一年を切り、他の野党間では立憲優位の候補者棲み分けもやむなしとの声が上がる。9月4日に代表選を予定する国民からは、野党連携を進められない玉木雄一郎、大塚耕平共同代表を降ろそうという策動も漏れる。

 岸田が不出馬を表明したその夕方、安倍は、東京・内幸町の帝国ホテル宴会場「孔雀の間」で開かれた日本医師会の役員就任披露パーティに出席。会長4選を決めた横倉義武への祝辞で、意味深長な発言をしている。

安倍晋三氏 ©文藝春秋

「横倉会長が初めて会長に就任されたのは2012年の4月だったと思いますが、その5か月後に私が自民党総裁として復活をさせていただきました。強引に結びつける考えはございませんが、自民党では4選した総裁は佐藤栄作総理ただ一人です」

 こう言って安倍は続けた。

「今、4選はできないようになっていますが、まさに、ある意味では継続は力。日本医師会ここにありと示していただいている」

 安倍にとって政権の長さでのライバルは今や大叔父の佐藤だけ。現在は総裁4選できないルールだが、党是である憲法改正を成し遂げればそれも可能になる――と聞こえなくもない。

 憲法改正を掲げ、森友・加計学園問題から逃れて、さらなる政権運営に当たろうとする安倍。その未来を左右するのが9月の総裁選だ。

(文中敬称略)