昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

新浪剛史が語る「経済外交」 金正恩がそれでも「核を手放さない」理由 

新浪剛史が語る「経済外交」と「日本経済」#3

2018/08/18

 米朝会談後も動きが不透明な北朝鮮に日本はどう対峙すべきか? アメリカ外交問題評議会のグローバルボードメンバーを務める新浪剛史氏が論じます。サントリーホールディングス社長というビジネスマンとして、また、日本経済の指針を議論する経済財政諮問会議メンバーとして考える「経済外交」日本の進む道とは?

◆◆◆

金正恩は核を手放さない

©鈴木七絵/文藝春秋

――北朝鮮の非核化についてはどう見ていますか。

新浪 今後5年という期限を区切れば、私は非核化はできないのではないかと思っています。もしあるとしても、金正恩の次の世代になると見ています。それまで北朝鮮は核を手放さないでしょう。

 台湾人作家のユン・チアンが著した『マオ――誰も知らなかった毛沢東』(文庫版では『真説 毛沢東 誰も知らなかった実像』 (講談社+α文庫) )を読めば、それがよくわかります。毛沢東は3000~4000万人、一説には1億人という人民を犠牲にして、旧ソ連から核技術を買った。そして中国が核を手にした途端、アメリカとの関係は大きく変わったのです。

――毛沢東の判断によって、中国が大国へ向かう足掛かりをつかんだということですか。

新浪 毛沢東は指導者として様々な問題を抱えた人ですが、核を持つことによって中国が世界において一目置かれるようになった。その大きなスプリングボードをつくった人であったということです。毛沢東の戦略によって、中国の世界的な地位向上につながったのです。ただし、毛沢東が核を持とうとしたせいで、残念ながら多くの人民の命を犠牲にしたことは決して忘れてはなりません。。

©AFLO

――そうした中国の戦略が北朝鮮にも影響していると。

新浪 その状況を北朝鮮の金日成はじっと見て考えていたはずです。核を持って始めて、アメリカの扱いが変わる。また大国間の扱いも変わる。少なくとも核を保有していることは身の安全になる。だから、北朝鮮は体制維持のためにも核がどうしても必要なのです。

 そこで問題になるのは、北朝鮮がMAD(相互確証破壊=核攻撃を相互に抑止する理論)を用いるかどうかということです。つまり、金正恩は、ひょっとしたら自分の人民を犠牲にしても、核のボタンを押す可能性がある。何をするかわからない。そこが問題なのです。

 ただ、今年6月に行われた米朝会談によって、北朝鮮の中で金正恩の評価は高まりました。決して世界を甘く見ているわけではないということです。また一方で、金正恩は学んだのです。核を持っていることで、世界の覇者であるアメリカ合衆国大統領がシンガポールまで会いに来ることを。だからこそ、金正恩はますます核を手放したくないと思ったはずです。

この記事の画像