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連載池上彰「WEB 悪魔の辞典」

「国のトップを自分たちで選べない」首相公選論の功罪とは?

しゅしょうこうせん【首相公選】――池上彰「WEB 悪魔の辞典」

2018/08/14

 池上彰さんの新連載「WEB 悪魔の辞典」では、政治や時事問題に関する用語を池上さん流の鋭い風刺を交えて解説します!

【首相公選・しゅしょうこうせん】

 首相になりたい人が唱え、なってしまうと言わなくなる政治改革のこと。

【池上さんの解説】

 日本の首相は国会議員の選挙で指名されます。首相の仕事ぶりが気に食わなければ「内閣不信任」を突き付けることができ、どうしても大統領ほどの力がありません。

 一方、国民にしても「国のトップを自分たちで選べない」という不満があります。そこで、首相を国民の直接選挙で選べるようにしようというのが首相公選論です。これなら首相は、「私は国民から直接選ばれているのだ」という強い自信につながります。

 そこで「我こそは」と思う政治家には首相公選論を主張してきた人もいます。例えば中曾根康弘氏であり、小泉純一郎氏です。

小泉純一郎氏 ©文藝春秋

 ところが、自分が首相になってしまうと、いつしか首相公選論を唱えなくなってしまいます。何のための公選論だったのと突っ込みを入れたくなります。

 ただし、国会多数派とは異なる政党の人が首相になると、国会と衝突することも増え、予算や法律が成立しないという状況が生まれる可能性もあります。中東のイスラエルでは、一時期、首相公選を導入したことがありますが、首相と議会の関係がギクシャクして、結局、廃止してしまいました。

 また、公選だと人気取りのポピュリズム政治家が選ばれやすくなるという心配もあります。小泉内閣が成立した直後の田中真紀子外相の人気ぶりを見ると、あのとき首相公選制度であれば、田中真紀子首相が誕生していてもおかしくありませんでした。その後、外相として数々のトラブルを引き起こしたことを思うと、首相公選の恐ろしさを感じてしまいます。

 とはいえ、「与党の密室談議で次期首相が選ばれるのはおかしい」という気持ちも理解できます。国民から真に支持されている人が国会の中から首相に選ばれる、という形になっていればいいのですが。

池上彰「WEB悪魔の辞典」のコーナーでは、池上さんの解説を聞いてみたい新用語を募集しています!

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