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2018/08/25

板井さんは八百長力士を選別できた

 これが中盆か、と感心したことがある。08年、板井さんと一緒に名古屋場所と九州場所を各15日間べったり観戦したときのことだ。番付表と取組表、そして前場所の対戦相手と勝敗を、まるで株式欄でも見るように凝視しつつ、各力士の取り口や土俵下での態度に着目していると、ガチンコ力士と注射(八百長)力士が選別できると彼は言った。実際、場所終盤になると、事前に板井さんが口にする注射力士らの勝敗は、ことごとくその通りになった。

 彼が引退後、「八百長は必要悪」というエクスキューズを完全に放棄したのは、アスリートとしての“自律”を後輩たちに促したいと考えるようになったからだ。

「八百長やったら引退してから必ず後悔するよ。オレが言うんだから間違いない。それをしなくてもいいような組織にしなきゃいけないんだよ」

 ジャズが大好きで、セロニアス・モンクのピアノを愛していた。ブルーノートに一緒に行くと、酒の飲めない彼はコーヒーを啜って目を閉じ、身体を揺らすのだ。顔の左半分で不良っぽく笑う、色気のある板井ちゃん、お疲れさま。そしてゴッチャンでした。