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佐久間 文子
2016/07/21

【著者は語る】好きな人のことだけ書く

『高田文夫の大衆芸能図鑑』 (高田文夫 著)

source : 文藝春秋 2016年8月号

genre : エンタメ, 読書

「週刊ポスト」の人気連載。どの回にも、高田さんの大衆芸能愛があふれている。

「もともと放送屋だから、スピード感や、いつ、そう思ったかの時間を大事にしているので、本になるまでにタイムラグが出たところは、追記で細かく補足しているんです。名人ばかり集めたいわけではなく、おれの基準で『今週はこの人』っていうのを書いてますね」

 その「高田基準」が面白い。漫才や落語、テレビ、ラジオから、映画や芝居、音楽と、カバーする範囲はおそろしく広い。そのうえで、大スターも自分の同級生も同列に、独自の視点で面白さを語る。

「人を見る目は確かだからさ(笑)。四十五年もこの仕事をやってるし、いまもラジオの生放送をやって、いいやつ悪いやつ含めて、いやっていうほど人に会ってますから。好きな人のことだけ書くのが基本的なスタイルで、ネットとかの悪口や批判を書きっぱなしっていうのは大嫌い。あれはダメ、っていうのは直接、会って言えばいいことだから」

 これほど多くのものを見聞きしているのに、記憶の細部が確かなことに驚く。

「いやあ、だいぶ衰えましたよ。だから書いておかないとだめなんです。その場でメモなんか取らず、いいなあと感じたことをすぐ一発本番で書いちゃう。自分の備忘録でもありますね」

 何を見るかの判断も、自分の勘と信頼する仲間の情報が頼りだという。

「ネットなんかで調べないよ。自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の手で原稿書いて笑わせる。オール手作り『下町ロケット』みたいなもん。喋る『下町ロケット』――いいね、このフレーズ。イラストの佐野文二郎だって、新宿ゴールデン街でおれがめっけてきたんだから。大衆芸能が好きで、いいニュアンスの絵を描く。おれの文章より面白いものを描こうとするセンスもいい。プロレスになってるから」

 四年前に不整脈から緊急入院し、八時間に及ぶ心肺停止状態から生還したが、しばらく療養生活を送った。

「大病をしたので、やっぱり自分の見聞きしてきたものを残しておかないとダメだなと思ってね。周りの人からもそう言われたし。なにしろ、戦前からの喜劇王だったエノケン・ロッパを戦後すぐハッキリと『面白くない』『のり平のほうが面白い』と日本で初めて言った子供が私です(笑)。東京の文化については、活字であれ放送であれ、ちゃんと伝えていかなきゃなと思っていますよ」

高田文夫の大衆芸能図鑑

高田 文夫(著)

小学館
2016年5月25日 発売

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