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連載近田春夫の考えるヒット

サザンの音作りには照れがない 生き残ってきたバンドの逞しさ――近田春夫の考えるヒット

2018/08/30

海のOh, Yeah!!(サザンオールスターズ)

絵=安斎 肇

 俺もさほどTVをつけたりするほうではないと思うのだが、最近『壮年JUMP』の流れるスポットを目にする機会は多い。いわずと知れたサザンオールスターズ40周年を祝うアルバムの収録曲であるが、オォそーかァ! これって“少年ジャンプ”から来てたのね。いま、字にしてみてはじめて気がついた。

 そういやアルバムタイトル『海のOh,Yeah!!』のことを、そのCMでナレーターが「オーヤー」と発音していたのも、近頃の英語的プロナンシエーションとはそういうものなのかいなと、素直に思っていた俺でもあった。が何のことはない。“生みの親”にひっかけてそう読ませているだけのことだと、さきほど資料を読んで知り、いささか拍子抜けしたところである。

 そんなこんな次第で、20年前に出したベスト盤の『海のYeah!!』も“海の家”のことだったんだよネ……などなど色々とまぶたの奥に過去の景色もひろがっていく。それにしてもこのグループのこの超安定した国民的な人気とは一体何によるものなのか?

 巡りめぐって、結局思いはそこに辿りついてしまう。

 まぁその因子は複合的/有機的であり、一点に絞りこめるような“決定打”ともいえる要素を見つけるのもなかなか難しいのだが、ひとつ、サザンが世間からなにより“ロックミュージシャン”として認知、そして尊敬もされているこの現実/状況は結構重要なポイントなのではないか。いいかえれば、彼らはイメージとして“芸能界の人間ではない”という――すなわちアンチまたは革新の側だ――立ち位置をうまく保持してきている。

海のOh, Yeah!!/サザンオールスターズ(ビクター)

 ところが一方楽曲傾向はといえば(ロックというにしては)、どこか歌謡曲的国内向け的で、つまりは分かりやすさや懐かしさ親しみやすさといった保守性や安定性が魅力の重要な柱となるような作りにもなっていて、そうした意味での、サザンの、人間存在的な印象と作風の二律背反状態(はちと大袈裟ですけど)に、なんらか共感や安心感を覚えるという層も案外多いのではないか? というのが俺の考えなのだが、では、それがどのような層なのかと問われると困っちゃうのよ。正直申して、この俺にもそこのところはまだスッキリとした答えが見つけられずにいる。申し訳ない……。

 さて、アルバムは、ベスト盤的な選曲に3新作を加えた全33タイトルという構成になっていてなんといっても凄い量である。ここまで一気に大量サザンを聴くのも久々なゆえ、思うところはいくつかあったが、やはり興味がいくのは新曲である。

『壮年JUMP』ひとつとってみても、自分達のファン――というのはさっきから話に出てきたような人たちのことね――は何を望んでいるのか、そのあたりの音作り/マーケティングに全く照れや迷いとかいうものがない。

 あらためて、生き残ってきたバンドの逞しさを見せつけられた格好であった。

海のOh, Yeah!!/サザンオールスターズ(ビクター)
1998年に活動20周年記念ベストアルバム『海のYeah!!』を出したサザンの40周年記念“プレミアムアルバム”。主に前回のベストアルバム以降の曲から選曲されており、「TSUNAMI」(2000年)、「HOTEL PACIFIC」(2000年)、「ピースとハイライト」(2013年)などを収録。ほか「北鎌倉の思い出」(原由子ボーカル)、「壮年JUMP」、「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」の新曲3曲を収録する。

今週の天下の秋を知る「オレの夏の定番ファッションといえば、下は半ズボン、上はタンクトップだったんだよね。毎年UNIQLOのカラフルなタンクトップからいくつか選んで買っていたのよ。ところが今年は下着以外のラインナップが見当たらなくって、そういえば街でもタンクトップの男って見ないよね」と近田春夫氏。「時代は変わっていくね」