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韓国にあって、日本にはない最新軍事テクノロジーの「国際開発力」

座談会・新しい技術と戦争の将来(前編)

2018/08/30
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韓国の兵器は実戦を経験している

――韓国のドローン技術はイスラエルから評価されるぐらい進んでいますね。もちろん、日本にもフジ・インバックさんや日本サーキットさん等、優秀な企業があります。ただ、国内的にも国外的にも知らしめていく場所がないですよね、ドローンもサイバーも。

 先日、南先生が「湘南UAVデモンストレーション」という産業用ドローンを屋外で飛ばす初の展示ショーを開催されましたが、こうした取り組みを増やしていくべきですよね。

東アジアの安全保障政策に詳しい伊藤弘太郎氏

伊藤 韓国はしたたかで、こうした場で商談や会議を行って、どんどん国際共同開発をしていって、それを共同で売り込むという新たな段階に進んでいます。しかも、軍事基地の中をいろんな国の軍人やビジネスマンが行き来をしていて、あちこちで商談をしているんです。

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 なんでこれが日本でできないのかと。皆さん、ドローンの技術も、サイバーの技術もそうですけれども、なかなか日本だと攻撃的な武器にはアレルギーがある。このままでは我が国は取り残されるんじゃないだろうかと思い、あえて隣の国を見習うことも必要ではないかというのが私の問題提起です。

韓国の武器輸出額は2006年から12倍以上に

 今、韓国の武器輸出額はどれくらいなんですか?

伊藤 2017年には31億9000万ドル(約3200億円)でした。韓国の武器輸出額は、2006年の2.5億ドルから12倍以上に急増しています。

 それはなぜなのでしょうか。

伊藤 少なからず実戦を経験しているからですね。K9自走砲は、まずトルコで売れて、ポーランドで売れて、フィンランド、インド、ノルウェー、そしてエストニアとの契約に成功しました。デンマークも導入を考えているそうです。

 どこもロシアの脅威を受けており、かつ限られた予算でなんとかしなければならない国々なんですね。そこへ韓国がスッと入ってくる。

 K9自走砲は、米軍由来の技術でかつ、2010年に韓国の延坪島という島が北朝鮮から砲撃をされたときには、反撃に使用された実績があります。さらに韓国は気候的に寒いので、「北欧の寒冷地でも使えますよ」とか……。細かいところでは、ノルウェーであれば「予算不足であれば、現在韓国陸軍が使用しているものを中古品として廉価で売りますよ」、ポーランドであれば「砲台はそちらの防衛産業で作ってもらって、こちらは機動部分だけで売りますよ」といった具合に営業が畳み掛けていく。

 

 日本のネットで検索すると、軍事マニアが「砲台は技術力がなくて売れなかったんだ、ハハハ」みたいな話になっているんですけれども、私からすると一部だけでも売れたってことに意味がある。つまり、売れるってことは向こうの軍や国防部、制服や背広の人たちとの関係が構築されて、やはり最終的に首脳同士で約束するんですよね。そこから軍事上の繋がり、外交上の繋がりに発展するからです。

――その一方で日本はまったく売れていない。中古品の装備を無料でプレゼントすることはありますが。

伊藤 その通りですね。日本が「施す」一方で、韓国は同じ国に対して、武器を売ります。向こうもお金を出して買うから、一生懸命習うし、関係をちゃんと構築しようと思うし、実際に購入した武器を使っているわけですね。だから我々としては、単に隣の芝が青いから真似をしようということではなく、やっぱり国際標準を見てどう生き残っていくかということを冷静に考えていかなければいけない。単に専守防衛ですとか、憲法改正が必要ですということではなくて、ちゃんと冷静に議論しないとどんどん世界のトレンドから取り残されてしまう。