文春オンライン

韓国にあって、日本にはない最新軍事テクノロジーの「国際開発力」

座談会・新しい技術と戦争の将来(前編)

2018/08/30

民生技術によって時代遅れと化した軍事技術

――今までのお話をまとめると、民生の技術革新のサイクルが軍事技術の開発スピードを上回っているのだと思います。

一同 そうですね。

――その典型例が陸上自衛隊で使用している広帯域多目的無線機(コータム)です。これ陸自内部では、「ポンコツだ」「使いにくい」「3kmしか離れていないのに無線がつながらない」と非常に評判が悪いんですね。ただ、コータムの開発開始は2007年。装備化されたのは2012年。要するに、当時と今のスマホの性能を比較すれば雲泥の差なわけです。隊員からすれば10年以上も前のスマホを操作することになるので、そりゃポンコツだと思いますよね。これは致し方のないことで、それだけ民間製品の開発実用サイクルが異常な速度になっているということです。

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 こうした背景もあり、アメリカや中国ではむしろ一般的な技術を軍事転用するというのが流行っています。中国では「軍民融合」と言われています。

 このドローンは市販で、6万円くらいで誰でも買えます。こんなに小さいですが、重量400gもの積荷を運べます。非常に安定しているので、実際に見ていただきたいんですけれども。これぐらいで飛べて、時速50kmくらい出るんですよ。

 

一同 50km!

 これで50~100mぐらいまで上昇すると「点」にしか見えないですし、羽音もほとんど聞こえないですね。結構静かに忍び寄ってくる感じで、ほんと盗撮するにはもってこいという感じです(一同笑い)。

伊藤 迎撃しにくいという話は本当ですね。ドローンはスマートフォンから生まれたとのことでしたが、技術としてはどう評価しますか?

ドローンはソフトウェアで飛んでいる

 ドローンは、メカニカルな制御ではなく、ソフトウェアによる制御で飛んでいます。その制御も、フィードバック制御という非常にシンプルなものをベースにしています。実はそこには最適化の余地がまだまだあり、回路や機体、プロペラの空力特性の研究により、イスラエルで見てきた回転翼ドローンには90分ぐらい飛行できるものもありました。

 ドローンは、2012年から既に戦争に影響を与えています。IS(イスラム国)がアマゾンで買える民生品のドローンを使った形跡があります。先日も草刈エンジンで作った固定翼ドローンが、シリアにあるロシア軍基地を襲撃しました。

ドローンの操作はスマホを使って行うことができる

――あれはまさに65年ぶりに大国の軍隊が「空爆」を受けた事例でしたね。米空軍でも、シリアに展開した部隊が市販のドローンから空爆されたことに衝撃を受けています。

 民生品のドローンは、市販の誰でも入手可能な部品を組み合わせて作ったものです。機構が簡単なので誰でも扱うことができる。空飛ぶプラットフォームとしてこういったものが使えると、空の使い方が変わってきますよね。