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青山 文平
2016/04/11

【この人の月間日記】浅草のバーと早稲田のラーメン

直木賞受賞第1作が頭から離れない

source : 文藝春秋 2016年5月号

genre : ビジネス, 働き方

青山文平氏

二月二十五日(木)

 一日ハイヤーを使ってよいとのことだったが、自宅に横づけは大仰だし、かといって近くに目印になる場所も考えつかない。で、紀尾井町まで電車で行って、文藝春秋からそのハイヤーを使わせてもらうことにする。編集者の山口由紀子さんに付き添ってもらって会場へ。

 いわゆる晴れの舞台ということなのだろうが、このところずっと頭にあるのは、三月末締め切りの中編のことだけ。小説の書き手が考えるのは、小説のことだけ。今月中に構想を得たいのだが、一連のインタビューやエッセイの執筆依頼にお応えするのにいっぱいで、本腰を入れて構想する余裕がなく、焦っている。で、構想以外にエネルギーを大きく使いたくないので、受賞者挨拶も、原稿を見ながらにさせてもらう。覚えるためのエネルギーは、小説の構想に回したい。

芥川賞、直木賞の受賞式

 無事、贈呈式が済んで二次会、そして三次会。これも公式行事の一環ではあるのだけれど、お祭りでもあるのだから、少しは弾ければ良いのだが、でも、やっぱり、小説の書き手が考えるのは小説のことだけ。最後までお付き合いいただいた皆様、お祭り気分を醸せないで申し訳ありません。

 帰りは、ありがたくハイヤーで。シートに腰を下ろしたときは午前一時を回っていて、激しく疲れた。でも、傍らには、「つまをめとらば」の表紙を描いていただいた村田涼平さんからプレゼントされた、あの美女が。原画を頂くなんていう贅沢が許されるのかと心が揺れたが、添ったからにはもう離れない。死ぬまで、あの美女と見つめ合っていきます。

二月二十九日(月)

 紀尾井町で、ビジネス誌の取材を受ける。インタビューも、これを含めてあと二つのはず。終わって、浅草のショットバー「バーリィ浅草」ヘ。といっても「バーリィ浅草」は定休日。飲みにではなく、数十冊の「つまをめとらば」にサインをするため。オープン当時からの付き合いなので、もう三十年近く。今回もたくさんの常連さんたちに買い求めていただいた。終わって、チーフバーテンダー、木村誠さんに夕飯に誘ってもらって、初・水口食堂へ。素晴らしい。なんでもあって、なんでも安く、なんでも美味しい。浅草はそこそこ知っているつもりだったが、ここを知らなかったとは。