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テスラ創業者、イーロン・マスクのツイートで大騒ぎ 「中二病」経営者の市場価値は?

2018/08/31
南アフリカ人の父とカナダ人の母の間に生まれたイーロン・マスク ©共同通信社

 この夏、米電気自動車ベンチャー、テスラの創業者CEO、イーロン・マスク氏(47)が世間を騒がせた。発端はマスク氏のツイッターだ。

「1株420ドルで、非上場化することを考えている。資金も確保した」(8月7日)

 米株式市場は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。実現すれば720億ドル(約8兆円)という史上最大のMBO(経営陣による自社買収)だから無理もない。

 発端は4~6月期の赤字決算。これを受け、ヘッジファンドが空売りを仕掛けて株価が急落。キレたマスク氏が「俺が株を買い取って非上場にしてやる」とムキになり、真に受けたメディアやアナリストが大騒ぎした。

 結局、8月24日にマスク氏自身が自社ブログで計画撤回を表明し、事態は沈静化した。この間テスラ株は乱高下しており、損失を被った投資家もいる。上場企業のトップとしてはあるまじき態度だが、マスク氏をよく知る人々は「またいつもの病気が出た」と苦笑する。

 自然環境をこれ以上破壊しないために電気自動車メーカーを創業し、人類を火星に移住させるべくロケットメーカーのスペースXを立ち上げたマスク氏の「中二病」はつとに有名だ。本気で人類を救おうとしているマスク氏は、ヒーロー映画『アイアンマン』の主人公のモデルともいわれる。今年7月にはタイで洞窟に閉じ込められた少年たちを救うため、小型潜水艦を作って現地入りした。

 自分が人類を救うと信じ込み、思い通りにならないと拗ねる、切れる。その行動パターンはまさに中二病だが、このヒーローは思い込みを現実に変える力を持っている。

 スペースXはベンチャーながら商業衛星の打ち上げでロッキードやボーイングを脅かし、電気自動車の市販でも先頭を走る。廉価版「モデル3」の量産に手間取り、米国の有力アナリストは「製造が(マスク氏が公約した)6月末までに週5000台に達すると予想する投資家は1人もいない」とこき下ろしたが、6月末には目標を達成した。

 テスラの株式時価総額は550億ドル(約6兆円)で、GM(507億ドル)、フォード(386億ドル)を上回る。株式市場は中二病のヒーローをまだ見捨てていない。