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「不美人に生んでくれた両親に感謝」 菅井きんの素敵な脇役人生

 日本を代表する“おばあちゃん女優”菅井きんが8月10日、心不全のため92歳の人生に幕を閉じた。

『太陽にほえろ!』での松田優作の母親役も有名 ©文藝春秋

 8年前に自宅で転倒し大腿骨を骨折して以降、車椅子での生活を送り、この4年間は公の場から遠ざかっていた。

「晩年は介護施設と一人娘の自宅を行き来しながらの生活でした。持病はなく、好きな肉や鰻を食べて煙草も吸い、前日まで元気だったそうですが、最後は曾孫ら家族に看取られて息を引き取った。

 三田佳子(76)が寄せた言葉『姑、母、老女と変幻自在に人間味のあるお芝居を見せてくれました』が、菅井さんの女優人生を象徴しています」(芸能デスク)

 菅井は都内の高校卒業後、東京帝国大学学生課の職員などを経て、「女優は美人がなるもんだ」と反対する父親を振り切り東京芸術劇場に入団。50年に結婚したのち、『生きる』(52年)、『ゴジラ』(54年)、『幕末太陽傳』(57年)など映画史に残る名作に名を連ねた。

「『ゴジラ』では実年齢より上の代議士役で、『幕末太陽傳』では遊郭の遣り手婆。女優人生の始まりから老け役で、30歳の頃からは大半が老け役。でも、本人は『不美人に生んでくれた両親に感謝しなきゃ』とあっけらかんとしたもの。脇役一筋で、スタジオでも仕出し(エキストラ)の通行人役のおばちゃんかと思うほど女優オーラはなかった(笑)。でも撮影に入れば緊張感溢れる演技を見せ、業界の評価は高かった」(元映画記者)

 とりわけ存在感を示したのが、73年スタートの『必殺仕置人』(テレビ朝日系)だった。放送記者が振り返る。

「藤田まことさん演じる中村主水の姑役でしたが、実年齢ではわずか6歳差なのに違和感のない姑と婿で、『ムコ殿』と呼ぶ台詞は流行語に。このドラマで彼女のおばあちゃん役は完成したといえる」

 82歳の時の映画『ぼくのおばあちゃん』(08年)が実に初主演作。世界最高齢の映画主演女優としてギネスブックに登録された。

「バラエティ番組への出演も多く、60を過ぎてお茶の間の人気者にもなったが決して驕らない人だった。療養中もリハビリを続け、最後まで仕事に対する意欲は失わなかった」(前出・芸能デスク)

 その脇役人生に献杯。