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「子どものお弁当に冷凍食品」は愛情不足? 誤解だらけの冷凍食品

冷凍食品ジャーナリスト山本純子インタビュー#1

冷凍食品のイメージを悪くした「犯人」

──初めて知りました。「冷凍食品」は、品質の落ちたものを材料にしているとか、保存料や着色料を使っている、栄養価が低いなど、「健康に悪そう」というイメージが強いのは、なぜなんでしょう?

山本 そうですね、誤解している人がとても多いんですが……。

 まず、冷凍食品のイメージを地に落とした犯人は冷凍魚だという説があります。戦後間もない頃、鮮度が落ちた魚を冷凍庫に入れたら臭いが無くなった、なら出荷しようと販売した業者がいたそうで、その頃の「冷凍魚は臭くてまずい」という認識が、世代を超えて「冷凍食品=まずい」とか「冷凍食品=粗悪品」というイメージで語り継がれているといわれています。どこまで本当の話か分かりませんが、実際に年齢層が高い方の方が、冷凍食品に抵抗感を持っている方が多いですよね。

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──確かに。若い世代は、「Picard(ピカール:フランスの冷凍食品専門店)」の上陸以降、冷凍食品をポジティブにとらえる人も増えたのではないでしょうか。むしろ、ホームパーティに使ったりして積極的に冷凍食品を生活に取り込んでSNSなどでシェアする人もいますが、ピカールの人気をどう見ていますか?

山本 大歓迎です! 実は日本でも過去、ピカールを手本に何度か冷凍食品専門店にチャレンジした例がありましたが、失敗しています。スーパーでお弁当用商品の伸長時期と重なったのが背景にあると思います。ピカール人気が、冷凍食品の誤解やネガティブイメージを払拭してくれるきっかけになれば、なお、ウェルカムです。

©文藝春秋

 フランスでは、ピカールは人気の高い食品のブランドで、冷凍食品は「普通の食材のひとつ」で、どの家庭でも日常的にあたりまえに使っています。ピカール人気を契機に、日本でも冷凍食品を「食材のひとつ」として購入し、家で最終的に解凍、調理して食べるという「冷食文化」がもっと広がっていくことを期待しています。

冷凍食品はお弁当の「保冷剤代わり」にはならない

──日本では、冷凍食品は、お弁当用商品が多いですね。最近は自然解凍できる冷凍食品も増えました。家ではそのまま食べられ、お弁当に入れると保冷剤代わりにもなって便利だと評判が高いそうですが。

山本 そういう声をよく聞きますが、実はそれは完全な誤解です。冷凍食品は保冷剤代わりにはなりません。業界でも「保冷剤代わりになります」といったことは一度もありません。

 自然解凍の商品は、朝お弁当箱に入れて、お昼の食べる時間に解凍されるように作られていますし、それ自身が傷むことはありませんが、ほかの食材を冷やす機能はありません。ですから、保冷剤代わりに入れて、安心するのは絶対やめてください、とみなさんにお伝えしたいです。特に夏場は、通常の食品が傷まない工夫が必要です。

取材・構成=相澤洋美

#2へ続く)

やまもと・じゅんこ
冷凍食品ジャーナリスト。「冷凍食品新聞」編集長、主幹を経て、2015年独立。現在は一般向けサイト「冷凍食品エフエフプレス」を立ち上げ、編集長としてサイト運営に携わる。冷凍食品の報道に携わって以来37年間冷凍食品を食べ、冷凍食品のよさとおいしさを発信し続けている。最近は冷凍食品解説者としてテレビ番組などでも活躍。夢は「冷凍食品ミュージアム」を設立すること。https://frozenfoodpress.com/

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