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きっかけは大ピンチ マリーンズの「ビール半額デー」が生まれた理由

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/09/01

 今年も「チケット・ビール半額デー」が行われた。今や定番となっており、他球団でも当たり前のように行われるビール半額デーのイベント。そのたびに遠い昔の事を思い出す。そう、このイベントを本格的に導入したのは05年の千葉ロッテマリーンズが最初である。

2005年に開催されたビール半額イベント ©梶原紀章

窮地の場面で 生み出された企画『360°ビアスタジアム』

 それは窮地の場面で急きょ生み出された企画だった。この年、6月28日の火曜日と29日の水曜日の日程にて韓国でホークスとの主催試合が組まれていた。28日に釜山で、29日は仁川での海外試合。すでに発表となり準備が進められたが、まったくチケットの売れ行きが伸びる見込みがたたない。悩みに悩んだ当時の事業部長の荒木重雄氏(現・株式会社スポーツマーケティングラボラトリー代表取締役)はある決断を下す決意を固めた。

「今思うと凄いよね。すでに発表になっている興行試合をシーズン中に中止にするのだから。まだプロ野球の仕事をやり出して一年目の時だった。無知だったから良かったというか、怖いもの知らずというか。確かに今、冷静に考えるとなかなかその決断は下せないよね。でも実施をしても事業的に収支をまったく見込めない。それなら一度、解体して新たなものを生み出すチャレンジが必要だと思った」

 強行実施をしても大赤字が出るのは間違いのない状態。もうすでに発表をしたものを撤回するのは体裁的にどうかとの周囲の意見もある中、勇気ある撤退をすべきと主張した。その意見に当時の球団首脳も理解を示しシーズン開幕寸前に中止が決定。韓国で行われるはずだった2試合は急きょ本拠地である千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリンスタジアム)で行われる運びとなった。

 ただ撤退をして終わりではなく荒木氏には腹案があった。急きょ組まれる本拠地での2試合。もちろんチケットは1枚も売れていないし、年間シートの対応範ちゅうでもなくすべての席がフリーの状態。ピンチはチャンスだった。かねてから温めていた企画を実行に移すのには最高のシチュエーションとみた。

「プロ野球では過去なかった全席自由席。お客さんはどの席から見てもいい。まさに360度自由席。それだけではパンチが弱いからビール半額も付けた。それに花火もあげることにした。スタンドをビアガーデンのようにしたいとね。だからタイトルは『360°ビアスタジアム』というキャッチーなものにした」(荒木氏)

『360°ビアスタジアム』のポスター ©梶原紀章