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徹底した「ファン目線」 オリックス名物球団職員が実践し続けていること

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/09/14

“ファン目線”
口で言うのは簡単だが、実践するのはなかなか難しい。
お題目や形だけが先行して、中身がなっちゃいない球団もある。

 そんな中、その言葉が使われ出す遥か前から、自らファンの中に入っていき、実践の中で絆を結んできた球団職員がいる。

 オリックス・バファローズのPM、花木聡さん。PMといっても、“午後からの男”という呑気な意味ではない。プロジェクトマネージャーという役職だ。簡単に言うと“ファンを作り育てる”仕事。球団情報の露出を増やしていくという命題のもと、球団のいろんな価値に光を当てる大切な任に当たっている。

オリックス・バファローズのPM、花木聡さん ©堀江良信

20年近く続いている花木さんの“日課”

 私がスタジアムアナウンスを担当していた頃は、よく試合中にアナブースへ顔を出しておやつタイムを楽しみ、ひとしきり喋ったらスタンドに戻って行く……そんな行動パターンが多かった。今から思えば、試合中ずっとお客さまと触れ合っていたのだろうか。オリックス球団2年目の年に公募で入社。営業、運営、企画、宣伝、神戸の球場長など、様々なポジションで仕事を重ねる中で守っていることがあるという。

“ファン目線”

 自らを「ファン出身」という花木さんは、この仕事を始めた当初からチームのファンと仲良くなるのが大好きで、神戸の球場で運営を担当するようになった2000年ごろから、試合後にファンを“お見送り”することを始めた。

 開場前に球場内の通路をグルッと歩き、売店のスタッフに「今日も頑張りましょうね」と声を掛けて、門からスタンドに通じるスロープの上に立ち、お客さまを迎える。そして、試合が終わった後は、帰途に就くお客さまと会話してふれあい、お見送りする。この日課は、もう20年近く続いている。

 始めた頃はちょうど、オリックス球団が神戸の球場のボールパーク化を進めている最中で、内野のフィールドを芝生にするなど、スタジアムのイメージを高める取り組みを行っていた。ハード面だけでなく、ソフトの側でも、球団職員が最前線に立ち、お客さまとじかに接する……。できそうで、なかなかできていないことを、この人は事もなげにやってきたのだ。

 今も、その“日課”を知る人が試合後に居場所へ集い、周りには話の輪が、勝った試合では笑顔の輪が広がる。そこで花木さんが交わす言葉は「ありがとうございました」ではなく、

「また明日!」
「うまい酒のもうー!」
遠征に行ったファンには「テレビに映ってたでー!」

 会話の花があちこちで咲く、賑やかなひととき。試合の余韻に浸りながら、惜しむかのような時間。ファンも、花木さんに会ってから帰るというルーティンが出来上がっている。

勝った試合では、ハイタッチしながらテンション高く会話が弾む

 勝っても、負けても。負けが込んだ時も……
お客さまと直接お話ししてお見送りする球団職員、他にいるだろうか。