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エリートの人生を翻弄した後発資本主義国の悲劇

『ドキュメント 銀行 金融再編の20年史 1995-2015』 (前田裕之 著)――鼎談書評

source : 文藝春秋 2016年4月号

genre : エンタメ, 読書

 

山内 明治維新以降、殖産興業を標榜する日本では「いかに企業に資金を貸し付けるか」が最大の問題でした。このため、日本の金融制度は、今もなお異様な「銀行中心主義」に陥っている――。日経新聞記者である著者は、直近20年の金融再編の歴史を丹念に取材し、本書の結論をこう収斂させていきます。

 銀行中心主義の象徴として挙げられているのが「日本興業銀行」(現みずほホールディングス)。戦後、興銀は金融改革の〈抵抗勢力〉となり、〈長短金融を分離する原則に抵触する改革(略)を遅らせることに精力を注いだ〉。そして大蔵省と癒着し、〈金融界全体の自由化を阻害〉したと著者は指摘します。

片山 銀行が市民からカネを集め、企業に貸し付けることで殖産興業を促進。その銀行を大蔵省が統制する。そういう〈護送船団方式〉で日本は成長してきたわけですね。

 それが1990年代以降、金融ビッグバン等で変貌してゆく。企業は資金を銀行から借りるよりも金融市場で調達する。銀行も従来の貯蓄銀行的なあり方から、より投資銀行化してゆく。英米的な金融システムに近づく。しかもグローバル化とセットになる。市民のお金も貯蓄より投資に向かうように誘導される。そうした流れが活写されています。

 でも、そのときはもはや、たとえば経済学者の水野和夫さんの言う「資本主義の終焉」の時代になっていた。日本の株式市場は外国の投機マネーに荒らされ、株価は連日何百円単位の乱高下を繰り返す。そういう時代に預金するよりも株をやりましょうと言われても一般市民には難しい。後発資本主義国の悲劇と言いますか。ようやく真似られたときには美味しい時代は過ぎているというか。私は本書を読むとどうも物悲しさも感ずるんですね。