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連載桜庭一樹のシネマ桜吹雪

『きみの鳥はうたえる』――桜庭一樹のシネマ桜吹雪

永遠のような夏

2018/09/09

 先日、二十年来の友人たちと、「そもそも友達ってなんだっけ」という話をした。

 一回一緒にお酒を飲んだらもう友達だ、という人もいるんだけど、それって軽すぎるような気もする。でも、命をかけてくれたら、とか、連帯保証人になってくれたら、とかだと、「いやー、それは重いよねー」。で、結局、どういう結論になったかというと……?

 さて、この作品は、『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』に次ぐ、佐藤泰志の小説の映画化第四弾だ。同名の原作では、最後にとある犯罪が起きるのだが、映画のほうでは、もしかしたら将来そこにいたるかもしれない、名もなき若者たちの、なにげない、今、この時、終わらない、終わらない、本当に終わらないある夏を、ていねいに描いている。

 舞台は函館の郊外。柄本佑演じる主人公の“僕”は、「糞ったれ!」って言っちゃうタイプだ。大柄で、怖そう。画面が割れてるし充電も10%しかないスマホで、女の子にメールする。染谷将太演じる静雄は、じつは内心「糞ったれ……」と思ってるタイプだ。小柄で童顔で可愛らしい。スマホのイヤホンが、およそ有り得ないほどこんがらがっていて、なかなか耳に挿せない。

 二人はアルバイト先で知り合い、気があって、同居。二段ベッドの下段に僕、上段に静雄で、暮らしている。

 石橋静河演じる女の子を間に挟み、二人の間にいろんな出来事が起こる。ところでわたしは、この作品を観ながら、『きみの鳥はうたえる』って、すごくいいタイトルだったんだなぁと気がついた。だって、自分の鳥はうたえない、という意味でもあるからだ。

 永遠のような夏だ。静雄の鳥だけがうたえる日も、逆の日もある。わたしと友人たちの二十年がそうだったように。

 それでも変わることのない友情が、心地よくて、いつまでも観ていたくなる青春映画でした。

© HAKODATE CINEMA IRIS

INFORMATION

『きみの鳥はうたえる』​
新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開中
http://kiminotori.com/