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三菱UFJ銀行は「年功序列」を打破できるか

2018/09/11
規模は邦銀ナンバー1を誇る同行 ©文藝春秋

 昨年秋以降、全国の銀行員がかつてなかったほどの戸惑い、不安を抱きながら働いている。なぜならば、自らの銀行員人生が描けなくなったからだ。契機となったのは、三菱UFJ・三井住友・みずほの3メガバンクが一斉に動き出した国内事業の構造改革である。デジタル技術の積極的な導入によって、人手に依存してきた業務をシステムへと代替させて人員余力を生み出す。それを人員削減や強化分野への人材投入に振り向けるという戦略である。

 これは過去にないモデルチェンジと言っていい。従って、銀行という職場に戸惑いが広がることは避けられなかった。

 銀行員の職場人生は分かりやすかった。2~3年のサイクルで転勤を繰り返し、それに伴って、階段を一段ずつ上がるような昇格によって平行員、主任、課長、副支店長、そして、支店長へと昇り詰めていく。そして、50歳ごろになると、関連会社や取引先への出向という第二の人生が始まる――。

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 すなわち、銀行員にとって職場の同僚を見極めるために必要なのは、「何年に入社したのか」という“年次”であった。

若手銀行員たちはいま何を思う? ©文藝春秋

 だが、いま、銀行の営業現場では「年功序列はいつまで続くのか」という不満を募らせ、「このまま転勤を繰り返して、自分は最終的に何のプロフェッショナルになれるのだろうか」と自問自答する若手行員が増え続けている。つまり、経営者たちが「事業構造改革の実行」と変化を強調し胸を張る一方で、営業現場では「一向に変わらない」旧態依然とした人事体系に愛想をつかす行員たちが増えているのである。

剣道は4段の腕前という三毛頭取 ©文藝春秋

 銀行という組織に生じた、この構造問題をどうすればいいのか。

三毛頭取が語ったこと

 そこで私は、わが国のトップバンクである三菱UFJ銀行を率いる三毛兼承頭取に、そんな疑問を率直にぶつけてみた(インタビューは月刊「文藝春秋」10月号に掲載している)。

 三毛頭取がインタビューで語ったのは、端的に言うと「伝統的な仕組みの打破」である。年功序列の見直しはもとより、銀行が長らく続けてきたゼネラリスト重視型の人材育成という人事体系の変革にまでその話は及んだ。

文藝春秋 10月号

 近年の銀行経営者の中には、人の能力を超えるAI(人工知能)の導入など、デジタル技術の活用ばかりを金科玉条のように語る人がいる。しかし、デジタル技術の世界で重視されているのは、「デジタル技術をもって、いかに社員たちの仕事ぶりを高め、その仕事を魅力的にするのか」という“デザイン力”である。デザイン力を経営的な別の言葉で表現するならば、「ビジョン」であり「構想力」である。そして、経営者に当てはめるのならば、“社員たちを腹落ちさせられる説得力”ということにもなる。三毛頭取のインタビュー記事はそのような観点からもお読みいただければ、と思っている。

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