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認知症の高齢ドライバーから「一律に免許を取り上げてはいけない」理由

高齢ドライバーの「運転行動チェックリスト」付き

2018/09/11
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100種類以上ある認知症がいっしょくたにされている

 中でも、認知症、あるいはその疑いがある場合についての免許返納のあり方について、課題があると言います。

「認知症というと、アルツハイマー病を思い浮かべる方が多いのですが、実際にはさまざまな認知症があり、その数は100種類を越えています。現在、アルツハイマー病が全体の約5割、脳梗塞などが原因の血管性認知症が約2割、残り3割をピック病やレビー小体型認知症が占めている。100種類以上もある認知症をすべていっしょくたに考えるのは無理があり、原因が違えば、治療法や対処法も異なります」

認知機能検査で好成績の「認知症」

 不整脈や糖尿病など、意識消失を起こす可能性のある病気でも運転免許の返上は任意になっている中、「認知症と診断されたからといって、すべての患者から一律に免許を取り上げるのは、いささか乱暴な考えだ」とも指摘しています。

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「実際に、アルツハイマー病であっても運転できる人はいるのです。一方で、高速道路の逆走やあおり運転をすることが多いピック病の場合、認知機能検査で好成績を収めることができるので、免許を返上する対象にすらなりません。ピック病は、感情や意欲を抑制できず、物事を段取りよく進めることができなくなります。しかし、記憶や認知機能は阻害されないので、認知機能検査をすり抜け、満点を取ってしまうのです。アルツハイマー病の場合は、ピック病とは異なり、記憶力が衰えてくるので、方向音痴になったり、距離感が分からずハンドル操作を誤ったりする可能性があります。このように認知症の症状はそれぞれ異なるのですが、現行の認知機能検査では、その点について考慮されていません」

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10回受検できる地域も

 また、免許更新の際の認知機能検査の受検回数は、地域によってばらつきがあると考えられています。

「はっきりとした受検回数は公開されていないのですが、都道府県公安委員会が受検回数を定めていて、東海地方のある県では10回受検できたと聞いています。都市部と地方では受検回数に開きがあると考えられます。一般に2回以上受検できるのですが、システムに慣れていないため、たった1回の検査では通常の認知機能を下回る可能性があり、複数回受検できるようになっているのです」