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連載池上彰「WEB 悪魔の辞典」

池上彰氏が指摘する「自民党総裁選 公正な報道を」文書の問題点

池上彰氏が指摘する「自民党総裁選 公正な報道を」文書の問題点

【「公正な報道を」】――池上彰「WEB 悪魔の辞典」

2018/09/12
note

 池上彰さんの新連載「WEB 悪魔の辞典」では、政治や時事問題に関する用語を池上さん流の鋭い風刺を交えて解説します!

【「公正な報道を」・「こうせいなほうどうを」】

 「自民党を悪く報道したら容赦しないぞ」という脅しの文書のタイトル。

【池上さんの解説】

 自民党は総裁選挙について、新聞や通信各社に以下の3点を挙げて守るように求める要請の文書を出しました。放送局にも出演交渉時に同じ要請をするということです。

1 取材は規制しない。
2 インタビュー、取材記事、写真の掲載にあたっては、内容、掲載面積などで各候補者を平等、公平に扱う。
3 候補者によってインタビューなどの掲載日が異なる場合は掲載ごとに全ての候補者の氏名を記し、2の原則を守る。

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石破茂氏 ©文藝春秋

 この文書の問題点は2つ。そもそも総裁選挙には公職選挙法は適用されないので、放送局に対する放送法の「政治的に公平であること」という規定は適用されません。放送局がどのような編成や放送をしようが自由なのです。余計な口出しだと言うべきでしょう。

 また新聞社はそもそも民間企業。「新聞法」などという法律はありませんから、こちらもどのように報道しようと自由です。それなのに「掲載面積」にまで口を出すのは、編集権の侵害です。

 今回の選挙は圧倒的な影響力を持つ現職の首相と、現在は無役の国会議員が戦う選挙。双方を機械的に平等に扱えば、現職首相に有利になります。それを狙って、こんな要請文書を出したのではないかと忖度したくなります。

 国民に対して堂々とオープンな場で選挙を戦い、どのような報道も許容する。これこそ「自由で民主的な」政党のあるべき姿ではないでしょうか。

池上彰「WEB悪魔の辞典」のコーナーでは、池上さんの解説を聞いてみたい新用語を募集しています!

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