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「証拠を焼け!」霞ヶ関官僚の「精神風土」は変わらない

旬選ジャーナル 目利きが選ぶ一押しニュース

2018/09/14

〈裁判記録閉ざされ確定できない史実 戦時下の新潟キリスト教弾圧〉8月16日、毎日新聞朝刊(筆者=青島顕)

 森友学園への国有地払い下げで、財務省の佐川宣寿元理財局長は、なぜ決裁文書の改竄に手を染めたのだろうか。

一線を越える者の心理

 もちろん安倍晋三首相や昭恵夫人の関与をうかがわせる記述を隠したかったろうが、一線を越える者の心理はそれだけでは説明がつかない、と思っていた。

©文藝春秋

 そんな折、73年前の“文書”に焦点をあてた毎日新聞・青島顕記者の「裁判記録閉ざされ確定できない史実」を読んで、霞が関官僚の「記録」に対する共通の“精神風土”に気づかされた。

終戦前夜の弾圧事件

〈新潟県高田市(現上越市)の高田カトリック教会に着任していたドイツ人のサウエルボルン神父は戦争末期の44年5月、同県の特別高等警察に逮捕された。聖書の研究会活動を警察に監視されていたとされ「天皇が神でなく人間に過ぎない」と言ったことで罪に問われたと言われているが、詳しい事情は分からない〉

 不可解なことに、罪名は不敬罪(旧刑法)か、もしくは治安維持法違反か、判決日も終戦の日をまたいで複数説ある。量刑では市史は「懲役3年執行猶予4年」と記しているが、当時の県警の報告を記した旧内務省資料は「懲役2年執行猶予3年」と一年も食い違う。青島記者は〈拷問を受け、十分に食料が与えられていなかったとする証言がある〉とも書く。

 発生当時から注目の事件ならば、裁判は傍聴が認められ、報道され、記録される。

 だが、本件は終戦前夜の弾圧事件で、証言者も少ない。刑事裁判記録がなければ事実を確定することができない。

 ところが真相究明を求める関係者が昨年、地検に保管されていた判決書の閲覧を求めたが認められず、裁判所に訴えても退けられた。

 ここまで読んで「?」だ――刑事訴訟法は秘密裁判を通じ政治弾圧が横行した戦前の反省から原則公開で、「何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる」と決めたんじゃなかったのか。