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14年半の歴史に幕「時事放談」御厨貴が明かす「野中広務が“下座”にこだわった理由」

「時事放談」司会者・御厨貴インタビュー#1

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最近は政治現象を「解説」する政治家が増えてしまった

――ということは、現在の自民党若手にはなかなか、そういった振る舞いは見られなくなりましたかね。

御厨 まあ、何というかみなさん合理的です。以前びっくりしたのはメイクルームで簡単な打ち合わせをしている時に、ある若い政治家が手帳を出しながら「この番組はたしか日曜日の朝ですよね? ということは、土曜の朝に生放送に出るから、この話はそこに取っといて……」って言うんですよ。オイオイ、その話できるんだったら、こっちでやってくれよって(笑)。

 

――政治家が話の出し惜しみですか。

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御厨 一昔前の政治家なら嘘でも「時事放談が好きだから、この話もしちゃおう」くらいのお世辞は言ったと思いますけどねえ。それから若手政治家に感じるのは政治を語る「語り口」の変化。最近は政治現象を「解説」するタイプの人が増えました。「説明と解説は司会の僕がやるんだから」って、思ったこともずいぶんありましたね(笑)。

――解説だと、なかなか「放談」にはなりませんね。

御厨 そうなんですよ。国会答弁と同じような「私は身ぎれいです」みたいな話に終始して、予定調和のまま収録が終わってしまった回もありました。本当はゲストの二人に張り詰めた緊張感があったほうが、最新の政治ニュースに対して意見がぶつかって「放談」の面白さが出てくるのに。

民主党時代から、土曜日にも政治が動いて痛し痒し

――収録は毎週金曜日の夕方なんですよね。

御厨 そうです。これもかつての政治カレンダーの名残といえば名残なんです。というのは、従来の政治日程は金曜日に一旦動きがストップし、土曜日は基本的に政治は動かないのが慣習だった。だから、1週間のまとめという意味で金曜の夕方に収録をし、日曜朝に放送する流れができていたんです。これが変わったのが民主党政権時代。政治主導だと言って、官僚をいわば排除するように仕事をするようになったものだから、どうしても仕事が進まなくなる。すると土曜日にも仕事が溢れてくる。自然と土曜日に政治案件が動くことも出てきた。さらには国内政治が国際政治に直結し始めたこともあって、なかなか土曜日が政治的に静かだということは少なくなってきました。番組側としては痛し痒しでしたね。

2001年3月4日放送 加藤紘一氏と藤井裕久氏が赤福を食べた TBS提供

――『時事放談』で独特なのが、本題に入る前のスイーツコーナーです。ゲストの政治家の地元銘菓だったり、果物をお出ししてショートトークを展開していますよね。

御厨 長年あのコーナーを司会の席から定点観測してわかったことがあるんです。ベテラン政治家ほど、食べ物に絶対に手をつけない。自分の地元の名産品であっても、お国自慢はするけど食べない。