昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載桜庭一樹のシネマ桜吹雪

『妻の愛、娘の時』――桜庭一樹のシネマ桜吹雪

「家族」って誰のこと?

2018/09/16

 うちの場合、祖父母の時代は親戚付き合いが密で、家族といえば“一族”のことだった。でも、両親の時代になると、夫婦と子供だけの“核家族”になった。で、その子供たるわたしはというと、一人暮らしの“個人”なのだ。

 まったく、現代の縮図っぽいなぁ~、と思う。

 さて、この映画に登場するユエ家もまた、まさに現代の縮図だ。

 舞台は中国のとある都会。主人公のフイインは定年を控えた女教師。両親と夫と娘の五人家族だったが、まず父を、続いて母を亡くした。

 遠い田舎の親戚に言われるまま、一度は父を田舎に埋葬したものの、都会にいいお墓を作って母と一緒にしてあげたくて、村に出向くことに。

 ところが、村には実は、親の言いつけで半年だけ父と結婚生活を送った老女ツォンがいた。彼女は都会に行ったきりの夫をずっと待っていたのだ。ツォンが死んで帰ってきた夫の墓の上に寝転んで阻止し、フイインはシャベルを握りしめて怒りの仁王立ち。そこに「婆さんを助けるぞー!」と、暴徒と化した村人達まで押し寄せて!?

 老女ツォンにとっては、家族とは“一族”のこと。だからフイインのことも、義理の娘として受け入れる。「私はユエ家の嫁、あなたはユエ家の娘。なのになぜ争うの?」でもフイインにとっては、家族とはあくまで“核家族”のこと。それに、両親なき今では、家長としての責任を感じている。

「私の家だもの。私が守らなきゃ!」

 そんな膠着状態に陥った二人の間に、フイインの一人娘ウェイウェイが立った。でも、“個人”な彼女が、事態をさらなる混乱に陥れて……?

© 2017 Beijing Hairun Pictures Co.,Ltd.

 主張が全く折り合ってないのに、不思議と、全員正しく思えてしまう。いつの時代も家族の問題は難しい。

 それだけに、女たちの最後の選択が、驚きと、温かな余韻を残す。これぞ大人のヒューマンドラマでした。

INFORMATION

『妻の愛、娘の時』​
YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
http://www.magichour.co.jp/souai/