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沖縄県知事選の行方は? 稲嶺恵一元知事の「懸念」

2018/09/20

 8月8日、沖縄県の翁長雄志知事が亡くなった。葬儀で弔辞を述べた稲嶺恵一氏は、1999年当時、条件付きで辺野古移設容認を表明した2期前の元知事。辺野古移設に反対する翁長氏は、4年前の県知事選出馬にあたって、稲嶺氏と一定の距離を置くようになったという。

 だが、稲嶺氏へのインタビューを通じて分かったのは、元来、2人は、父祖を辿ると同じ「きょうだい門中」の間柄として、また保守派政治家として、長らく密接な関係にあったことだ。そもそも翁長氏は稲嶺氏の1期目の知事選における最大の功労者で、翁長氏の那覇市長就任に尽力したのは稲嶺氏だった。

翁長氏と稲嶺氏 ©共同通信社

稲嶺氏が「怖い」と言った理由

 その稲嶺氏は、ある世論調査の数字を気にしていた。NHKが沖縄に関して数年ごとに行なっている調査の中で、「本土の人は沖縄の人を理解しているか」と沖縄県民に尋ねる項目だ。

「理解している」は、本土復帰直後の1973年で21%。87年の45%まで上がり続けたが、以後は下がる一方。昨年は19%となった。「理解していない」は、73年が59%。87年の48%まで下がってから上がり続け、昨年は70%に達した。

「本土の人は沖縄を理解していない」と感じる沖縄県民が、増え続けている。そのことを、稲嶺氏は怖いと言った。

 その象徴が、米軍基地問題だ。普天間飛行場(宜野湾市)の返還は、名護市辺野古への移設を巡ってこじれたあげく、沖縄県と日本政府が対立する構図。翁長雄志前知事は決着を法廷闘争に持ち込んだが、法律は感情の問題を解決できない。沖縄県民と沖縄以外の国民、県民の中でも辺野古受け入れ容認派と反対派の間に、解消できないしこりが残ることを稲嶺氏は懸念する。

©共同通信社

事実上の一騎打ち

 今回の県知事選は、翁長前知事を支えた「オール沖縄」が推す前衆院議員・玉城デニー氏(58)と、自民、公明、日本維新の会が推薦する前宜野湾市長・佐喜真淳氏(54)との事実上の一騎打ちとなった。

 前哨戦といわれた今年2月の名護市長選では、自民や公明が推薦する前市議の渡具知武豊氏が、3選を目指した辺野古受け入れ反対派の現職を大差で破った。地域経済の活性化を訴えて勝利した渡具知新市長は、米軍基地を負担する自治体に対して防衛予算から交付される「米軍再編交付金」30億円を財源に、保育と学校給食の無償化を実現した。

 9月9日に行なわれた名護市議選では、定数26のうち、反対派が15議席を獲得。改選前と同じく過半数となった。市長選で容認派が当選し、市議選では反対派が多数を占めたことから、知事選の行方はますます見通せなくなった。

 自民党と維新の会が8月下旬にそれぞれ行なった県知事選の事前調査によると、玉城氏支持はどちらも55%以上に達し、佐喜真氏支持は28%と21%という結果。しかしサンプル数が少ない上、民意の正確な反映ではないともいわれる。

文藝春秋 10月号

 急逝した翁長前知事の「イデオロギーよりアイデンティティー」という遺志が支持されるか。安倍政権とのパイプを強調し、子育て支援や雇用の改善、交通渋滞の解消などを争点とする戦術が奏功するか。投開票は30日。どちらが勝っても、基地問題の大きな節目となることは間違いない。

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稲嶺恵一氏のインタビュー全文は、発売中の「文藝春秋」10月号に掲載されています。