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著作権の保護は、産業の発展を妨げる?

『パクリ経済 コピーはイノベーションを刺激する』 (K・ラウスティアラ&C・スプリグマン 著/山形浩生・森本正史 訳)――鼎談書評

source : 文藝春秋 2016年3月号

genre : エンタメ, 読書

 

片山 ファッション、料理、コメディ、スポーツ、金融……真似(イミテーション)が頻発する産業は発展する――。本書は、業界内で真似し真似されることによって多くの競争が起きて、次から次へと革新的なアイデアが生まれると主張しています。

 例えば、格安ファッションブランド『フォーエバー21』が、高級ブランドのドレスに驚くほど似たドレスを販売しました。ところが、アメリカにおける著作権保護はファッションには適用されないので問題ない。それどころかコピーは〈ファッション・サイクルを加速〉させ〈トレンドを発展、拡張させる〉と言う。経済が発展するための“仕掛け”としてコピーを推奨しているわけです。当たり前のことにも思えますが、著者は私達が普段考えもしない切り口から問題提起をしています。

山内 料理とコピーの関連性、創造性の記述が面白かった。特にアメリカ料理についての記述は抜群です。〈アメリカでは歴史の大半を通じて確固たる料理文化は存在しなかった〉から料理のコピーが成功し、外食産業が発展したという。アメリカは移民の国。自国の食文化にはイタリア、ドイツ、フランスなど各国料理を取り入れてきたわけです。さまざまな国の料理を「文明の高さ」と「消費欲の高さ」で独特に発展させ、創造してきたのがアメリカ料理なのでしょう。

キャンベル 「アメリカ料理はコピー」と断言すべきか否かは少し疑問ですね。僕の祖父母はアイルランド系移民で、毎年、イースター(復活祭)になるとガチョウの卵を食べる習慣がありました。当時住んでいたアパートにはイタリア移民やドイツ移民の家族が住んでいたのですが、いつの間にか、ガチョウの卵を食べる習慣が彼らにも浸透していった。イタリア移民の一家は卵にホウレンソウと松の実と赤ワインを入れて「イタリア風」にして食べます。そして我が家もそれを共有する。料理があらゆる要素を取り込み、少しずつ変化していくのは、当然の成り行きです。それはコピーではなく、「換骨奪胎」ですよ。

片山 料理にはレシピがあっても、食材の違い、調理する温度、使っている鍋などで無限に差異を作ることができますしね。