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【新書の窓】業界の裏側

『VWの失敗とエコカー戦争』『宇宙飛行士という仕事』『健さんと文太』『すごい家電』『香港』

source : 文藝春秋 2016年3月号

genre : エンタメ, 読書

世界に衝撃を与えたフォルクスワーゲンの不正ソフト事件。その背景にあったのが、二〇一八年から米カリフォルニア州で導入されるという世界で最も厳しい環境規制だ。香住駿『VWの失敗とエコカー戦争』(文春新書)は、この規制に対応するため、世界中の自動車メーカーが、巨額を投じて次世代エコカーの開発にしのぎを削っている実情をレポートする。自動車産業に参入したグーグル、アップルの最新動向など、自動車産業の未来もこの一冊で一望できる。

 柳川孝二『宇宙飛行士という仕事』(中公新書)の著者は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の事務局トップとして宇宙飛行士候補者の選抜を担当してきたエキスパート。宇宙飛行士の選抜試験で求められる資質、閉鎖環境での地上訓練の実態、そして特別手当の中身まで、人類史上五百五十人ほどしかいないこの職業の現場に直接関わってきた著者が具体的なエピソードとともに活写する。宇宙と未来への期待が膨らむ新書だ。

 高倉健と菅原文太、日本映画を代表するこの二大スターに映画プロデューサーとして身近で接してきた著者による一冊が、日下部五朗『健さんと文太』(光文社新書)。自らが見聞した二人の対照的な姿を活写しつつ、映画を一から作りあげていくプロデューサーという仕事の面白さや苦労話を語っていく。「じつは脱ぐだけなら、ことは簡単である。脱ぎながら、演技をするのが難しい」など、プロデューサー視点の女優論も興味深い。一読後、映画の見方が大きく変わる。

 春節に中国人が炊飯器やウォシュレットを爆買いするのも見慣れた光景となった。西田宗千佳『すごい家電』(講談社ブルーバックス)はそんな日本の家電にこめられた創意工夫を解説する。サイクロン式と紙パック式の掃除機は得意分野が違う、エアコンのドライ機能は冷房と暖房を同時に行う瞬間があるので節電にならない――家電の仕組みが勉強できるだけでなく賢く使うための情報も満載。

 中国が抱える民族問題を香港という窓からのぞくことができるのが、倉田徹・張イクマン『香港』(岩波新書)。独自の通貨やパスポートを持ち、大陸とのひとの移動が制限されるという点ではひとつの「国家」であるが、外交権がないので「香港国籍」は存在しない。そんな意外と知られていない「一国二制度」の実情を知ることができる。政治的自由はないが、報道・集会・信教の自由と無関税・低税率という経済的自由が保障されているのは、イギリス統治時代と変わりがないというのも興味深い。(川)

健さんと文太 映画プロデューサーの仕事論 (光文社新書)

日下部 五朗(著)

光文社
2015年12月16日 発売

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すごい家電 いちばん身近な最先端技術 (ブルーバックス)

西田 宗千佳(著)

講談社
2015年12月18日 発売

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香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)

倉田 徹(著)

岩波書店
2015年12月19日 発売

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