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なぜエリートの間で「アートを学ぶ」ことが重要視されているのか?

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』 (山口周 著)――ベストセラー解剖

2018/09/27
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『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(山口周 著)

 グローバル企業で活躍するエリートのあいだで、アートを学ぶことが、単なる「教養」ではなく、ビジネスの問題として重要視されているという。さまざまな局面で露呈した、論理的・理性的な思考の限界を、「美意識」を鍛えて乗り越えようというのだ。日本のビジネスシーンにおいてはまだあまり着目されていないこうした問題意識を、数々の知見や事例を巧みに集積し、説得的に示した新書が、刊行から約1年、口コミでじわじわと支持者を増やし、ベストセラーとなった。

「男女問わず、20代、30代の若手ビジネスパーソン……現場の第一線で活躍している方々に読まれている印象です。著者は以前から、著作やブログで、高い目標値を設定し、その達成のために現場の尻を叩き続ける経営を批判していました。それによってコンプライアンス違反が多発するであろうことも。やがてそれを証明するかのように、東芝の粉飾決算など、『美意識』なき経営が招いた問題が相次いで明らかになった。本書はこれまでの著作を超えるヒットになりましたが、著者が変わったのではなく、時代が著者に追いついたと感じています」(担当編集者の三宅貴久さん)

 だが一方で、欧米企業と比較した際、日本企業には論理的・理性的な思考の不徹底も目立つ。新刊『劣化するオッサン社会の処方箋』では、本書の問題設定を引き継ぎつつ、そうした点を指摘し、議論を深めている。

2017年7月発売。初版1万2000部。現在13刷8万部

なぜエリートの間で「アートを学ぶ」ことが重要視されているのか?

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