昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

【新書の窓】変化する常識

『非常識な建築業界』『中国4.0』『2020年の大学入試問題』『六国史』『寿命はなぜ決まっているのか』

source : 文藝春秋 2016年5月号

genre : エンタメ, 読書

見た目は格好良いが、使い勝手が悪すぎる公共施設が次々と建てられている。森山高至『非常識な建築業界』(光文社新書)は、建築家の自己表現を追求する建物によって自治体の財政や住民の生活環境が脅かされている現状を告発する。新国立競技場問題のようなトラブルなど「よくある話」。自身も建築家の著者が、建築業界で続く問題の複雑な背景を諧謔味のある筆致で解説する。閉鎖的な建築業界に一石を投じる一冊。

 エドワード・ルトワック『中国(チャイナ)4.0』(文春新書)は、中国という危険な隣国に向き合う日本の「逃れられない現実」を突き付ける。二〇〇〇年以降、「平和的台頭」(中国1.0)路線を採ってきた中国は〇九年に「大きな間違い」を犯し、「対外強硬路線」(2.0)に。その結果、自らを囲い込む「反中同盟」が形成される。そこで一四年秋には「選択的攻撃」(3.0)路線にシフトしたという。来るべき「4.0」とはなにか。日本へは、どんな影響をもたらすのか。歯に衣着せぬ分析を示す。

 二〇二〇年からセンター試験が廃止され、全く新しい学力評価テストを導入。各大学もグローバルスタンダードを意識した個別の独自入試を開始するという。石川一郎『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)は、その新たな試験内容と、それを解くスキルを解説する。記憶した知識を再生するだけでは太刀打ちできないという新試験。解くためには、自分という存在を掘り下げることが不可欠だとか。対象となる二〇〇二年以降生まれの子供を持つ親は必読。

 律令国家として体制を整備した古代日本は国史の編修に力を注いだ。その成果が『古事記』、そして『日本書紀』以降の「六国史(りっこくし)」だ。遠藤慶太『六国史』(中公新書)は、神代から平安中期までを記録した第一級の史料であり、わが国の貴重な資産でもある「六国史」の成立過程や特質を、中国正史と比べながら分かりやすく詳述する。近年に類書を見ない「正史」の入門書だ。

 小林武彦『寿命はなぜ決まっているのか』(岩波ジュニア新書)は、細胞レベルから老いという運命を見据える。通常の細胞は分裂する度に染色体の末端にある「いのちの回数券」を使ってゆき、その半分を使い尽くすと老化が始まりやがて死ぬ。対して、人間個体の老化は通常の細胞を生み出す幹細胞の老化が大きな要因で、その幹細胞の老化はDNAにエラーが蓄積することによると著者は言う。長寿遺伝子の存在、老化とガンなど興味深い話題を平易な言葉で説明する。(川)

中国4.0 暴発する中華帝国 ((文春新書))

エドワード ルトワック(著),奥山真司(翻訳)

文藝春秋
2016年3月18日 発売

購入する

2020年の大学入試問題 (講談社現代新書)

石川 一郎(著)

講談社
2016年2月17日 発売

購入する

六国史―日本書紀に始まる古代の「正史」 (中公新書)

遠藤 慶太(著)

中央公論新社
2016年2月24日 発売

購入する