文春オンライン

連載尾木のママで

究極に厳しい世界 パラリンピックの魅力とは――尾木ママ語る

尾木のママで

2018/09/27
イラスト 中村紋子
イラスト 中村紋子

 一九六四年、戦後日本復興の象徴として国民的熱狂の中開催された東京オリンピック。続き開幕したパラリンピックは第二回大会としてその名が世界に広まった。当時高校生だったボクは、テレビ越しに観戦。障害を持つ人が限界に挑む姿に、感性が激しく揺さぶられたのを記憶している。

 時は巡って今年、ボクはパラリンピックを支援するお仕事の機会をいくつか頂いた。そこで感じたのは、二年後の東京パラリンピックへ向けた社会的気勢の高まり! 半世紀前とは隔世の感を覚えるの。

 先日はNHKが二〇一五年から主催するイベント「Nスポ!」でママアスリートの寺田明日香さんと対談してきたわ。会場では東京2020オリ・パラ大会競技を中心に多種多様なスポーツ体験もできたの。ボクも六歳の孫娘と参加。挑戦する孫娘を選手の皆さんが傍で優しくサポートしてくれた。選手の苦労や競技の魅力が体感でき一気に親近感が♥「東京オリ・パラ成功のカギを握るのは実はパラリンピック」という意気込み溢れるイベントだった。

ADVERTISEMENT

 今年、日本のスポーツ界は暴力やパワハラと不祥事続き。その背景に根を下ろす勝利至上主義こそ元凶よ。一方、パラスポーツはそれが通用しない、ある意味究極に厳しい世界。勝利や結果は目標の一つではあれ目的ではない。選手がいかに自分を見つめ、力を磨き高めるか突き詰めていく。その精神は「肉体と意志と精神のすべての資質を高め、バランスよく結合させる生き方の哲学」というオリンピズムにも見事に合致するわ。

 障害者水増し雇用問題に象徴されるように、日本はハード・ソフト両面ともバリアフリー化で世界に大きく後れる。パラリンピックこそ試金石ね。ここは盛り上がる機運を生かし、真に多様性が尊重され個が伸びていける空気が、社会、スポーツ界、そして教育界にも満ちるようにしたいわね。

究極に厳しい世界 パラリンピックの魅力とは――尾木ママ語る<br />

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー